ピコレーザー(エンライトンSR)

従来のシミ治療にはQスイッチレーザーといわれるナノ秒(10億分の1)レーザーが用いられてきました。ピコ秒(1兆分の1)レーザーはより短いパルス幅での照射が可能となった治療器で、従来と比べて痛みを抑え、薄いシミの治療が可能となりました。
当院ではピコレーザーの1種である、エンライトンSRを使用しております。エンライトンSRは日本の厚生労働省、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)の認可を受けたピコレーザーになります。エンライトンSRの「SR」は”Skin Revitalization=肌再生” を意味し、肌治療に適した細かな設定ができ、シミやくすみなどの色素除去、小じわやニキビ跡など様々な肌の悩みに治療効果を発揮します。
ピコレーザーには3種類の照射方法があり、単独もしくは組み合わせることで治療効果を高めることができます。
ピコレーザーの照射方法
ピコスポット
老人性色素斑・そばかす・ADMをピンポイントで除去する治療となります。
目立つシミ(老人性色素斑)やそばかす、ADMに対して、ピンポイントでレーザーを照射する治療法です。照射されたレーザー光線はメラニンに吸収され瞬間的に熱となりますが、メラニンが熱膨張する際の衝撃波によりメラニンを破壊するため、これまでのQスイッチレーザーと比べ、皮膚の熱変性を抑えて治療を行うことができます。
照射時に輪ゴムではじかれたような痛みがあります。照射した部位は虫刺されの後のような膨疹となり数時間で落ち着いていきます。その後は、かさぶた状になり、かさぶたが剝れ落ちるまでの間シミの色が目立つようになります。かさぶたは1~2週間ほどで剥がれ落ちピンク色の皮膚になります。その後は一過性の色素沈着を生じることがありますが、3~6か月かけ次第に薄くなっていきます。ADMの場合は真皮にあるメラニンのため、かさぶたにはならずに一時的濃くなり、1~3カ月かけて徐々に薄くなっていきます。ADMでは5回前後の回数が必要となります。通常のシミでも色味により必要となる回数が異なります。
オプションにはなりますが、他院ではあまり行われない上瞼やまつ毛付近、涙袋付近も当院では照射可能となります。眼球保護のために点眼の麻酔を行い、特殊なアイレンズ(コンタクトシェル)を装着していただいて治療を行います。
治療後は色素沈着を抑えるため、トラネキサム酸等の内服やトレチノイン・ハイドロキノンの外用をおすすめさせていただいております。
注意事項
- すべてのシミやそばかすが1回で消えるわけではありません。レーザーで反応しないような、メラニン量が少ない状態となると、照射を行ってもうっすらと残ってしまう可能性があります。
- 照射直後は赤みや腫れが生じますが、翌日にはほぼ治まります。
- テープ保護は原則不要ですが、軟膏での保護が必要となります。大きいシミや肌に摩擦を受けやすい方ではテープ保護を行った方がかさぶたがすぐに剝れてしまい摩擦による色素沈着を抑える効果が期待されます。
- 照射箇所が黒く薄い膜状のかさぶたとなりますが、1週間程度で自然に剥がれます。
- メイクは翌日以降可能です。
- シミの状態や種類によっては照射後に瘡蓋にならない場合や色味が濃くなったり、薄くならない場合もございます。
- 1~3ヶ月間隔で治療可能です。
- ADMの場合は個人差があり、目標とする程度により治療に3~5回程度の回数を要します。
ピコトーニング
肌全体に低出力のレーザーを照射する治療です。肝斑や炎症後色素沈着、くすみの改善効果が期待されます。メラノサイトの縮小や樹状突起の短縮といったメラノサイトの活性を抑え、表皮細胞を傷つけずに沈着したメラニンを減少させる働きがあり、肝斑治療や炎症後色素沈着治療にも適しています。(肝斑治療は原則として内服薬を併用します。)
難治性の肝斑ではピコトーニングのみでは治療が不十分となることが多く、肝斑治療は真皮層のリモデリング治療も重要となります。ニードルRF特にシルファームを使用した肝斑治療は近年注目を集めていますが、真皮へのアプローチとしてはジュベルックやピコフラクショナルといった方法もあります。
真皮層のリモデリング治療
ピコフラクショナル
ジュベルック
ニードルRF(シルファームやポテンツァ)…当院では取り扱いがありません
ピコフラクショナルはアジア人における顔面肝斑の治療における1064nmフラクショナルピコレーザーの有効性と安全性に関する研究では、4~6週間間隔での治療を9回行い、治療終了6週間後で70%が少なくとも中等度の改善を認めたと報告されています。1)
ジュベルックは真皮の抗炎症作用と線維芽細胞活性化によるコラーゲン生成を促す製剤で、肝斑への効果に関する報告がなされています。
当院での肝斑治療は、難治性の肝斑ではピコトーニングに低出力のピコフラクショナルを組み合わせたピコダブルやジュベルックの手打ちといった治療をご提案させていただいております。
注意事項
- 照射時はパチパチと優しく弾かれるような痛みがあります。
- 最短で2週間隔で治療可能です。
- ダウンタイムはあまりない治療ですが、一時的に赤みや膨疹が出る場合や施術後に毛嚢炎ができることがあります。
- 白斑ができる可能性があるため、照射間隔や出力は医師にご相談ください。
ピコフラクショナル
毛穴や小じわ、ニキビ跡の凹みの改善効果が期待できる施術となります。マイクロレンズアレイを装着して強力な衝撃波による点状にレーザーを照射する治療です。
炭酸ガスレーザーのように肌に穴をあけ深部にエネルギーを届ける(アブレイティブフラクショナルレーザー)治療ではなく肌の表面には穴をあけず深部にエネルギーを届ける(ノンアブレイティブフラクショナルレーザー)治療のため、ダウンタイムが少ないことが利点です。
ピコレーザーをフラクショナル化し、照射をすると衝撃波により真皮の組織内に空洞(LIOB: Laser-Induced Optical Breakdown)ができます。LIOBによる刺激で創傷治癒過程が惹起され、コラーゲンやエラスチンを増生し肌の再構築が促されます。ニキビ跡の治療目的の場合では高出力での照射をし、肝斑治療では刺激による肝斑悪化を避けるため低出力での照射を行います。
ピコスポットやピコトーニングと組み合わせて治療を行うことも可能です。
ニキビ跡や強い毛穴の開きには表面麻酔を使用し高出力での照射を行います。内出血が起こりやすく、ピコトーニングとの併用をすることができませんが、より高い治療効果が期待できます。また、スタック打ちといい、ポイントで高出力での重ね打ちを行うことも可能です。
肝斑がある方へは高出力の照射では悪化することがあるため、ご説明の上低出力での施術をご案内することがありますがご了承ください。
ニキビ跡治療では、アイスピック型のクレーターがある場合ではTCAクロス、ローリング型のクレーターがある場合ではサブシジョンの組み合わせをおすすめさせていただいております。
注意事項
- ニキビ跡や強い毛穴の開きには高出力での照射を行います。表面麻酔を使用しますが、強い痛みを感じることがあります。
- 施術後の赤みは24時間程度出現いたしますが、長くても2~3日程度で落ち着きます。
- 内出血が起こる可能性があり、内出血は1~2週間ほどで自然に吸収されます。高出力での照射では内出血や赤みは強く起きやすくダウンタイムが長くなる可能性があります。
- 最短で1ヶ月間隔で治療可能です。
複合施術
ピコレーザーを使用した複数の照射方法を組み合わせることで多くの悩みに対し、効果を発揮していきます。
ピコトリプル
ピコスポット、ピコトーニング、ピコフラクショナルを同日に行う治療です。
ピコトリプル時のピコフラクショナルは基本はピコダブル同様弱めのピコフラクショナルとなりますが、ニキビ跡など部分的に強く照射をご希望される際は、その部分のピコトーニングを避け強いピコフラクショナルの照射が可能となります。
ピコダブル
ピコトーニングとピコフラクショナルを同日に行う治療です。ニキビ跡など部分的に強く照射をご希望される際は、その部分のピコトーニングを避け強いピコフラクショナルの照射が可能となります。肝斑がある場合は、通常より弱めのピコフラクショナルでの照射となります。