ジュベルック / ジュベルックボリューム(レニスナ)
ジュベルック、ジュベルックボリューム(レニスナ)ともにPDLLA(ポリDL乳酸)と非架橋ヒアルロン酸を配合した製剤となります。PDLLAはポリ乳酸の1種で生体内で分解させる生分解性プラスチックの1種となり、溶ける糸の成分としても知られています。粒子径の違いからスキンブースターとして使用される製剤をジュベルック、ボリュームロスの改善効果を主な目的として使用される製剤をジュベルックボリュームといいます。
ジュベルックボリュームとレニスナは同一製品になります。
ジュベルック
ジュベルックは1バイアル中に粒子径が20-40μmのPDLLAを42.5mg、非架橋ヒアルロン酸を7.5mg含んだ製剤となります。肌の浅い真皮層へアプローチする一般的に肌育製剤といわれる製剤の1種です。真皮層でコラーゲン生成を促すことで、肌のハリ感アップや小ジワの改善、ニキビ跡のクレーターや毛穴の引き締めといった効果が期待できます。
施術は全顔から気になる部分への局所注入まで対応しており、注射器での手打ちや水光注射、ダーマペン、RF治療器などを用いて行います。基本の治療スケジュールとしては、1ヶ月から6週間(しこりのリスクをより慎重に抑える場合は6週間)ごとに計3~回の施術を行い、その後は効果を維持するために半年から1年ごとの定期的なメンテナンスをおすすめしており、およそ12〜16ヶ月にわたり効果が持続すると言われています。
なお、目の周りなど皮膚が薄い部位はしこりができやすいため注意が必要であり、他院様では先の丸い針(カニューレ)を用いて注入することもありますが、当院では患者様の安全としこりのリスクを最優先に考慮し、注入方法を問わず目周りへの施術は一切行っておりません。
ジュベルックによる肝斑が改善したという報告があり、ジュベルックによる抗炎症作用や線維芽細胞活性化によるコラーゲン生成や真皮のリモデリングが関与している可能性があると考えられています。1,2)
ジュベルックのまとめ
- 毛穴や小じわ、浅いニキビ跡の改善効果が期待できます。
- 治療間隔は1か月~6週間毎、計3~回が目安。その後は半年~1年ごとがおすすめ。効果持続時間は12~16カ月。
- 注入層は真皮深層(浅すぎるとしこりのリスクが高まる)
- 注入方法は30~31G針(目の下はしこりができやすいためカニューレを使用し注入も可能ですが当院では行っていません)
- 水光注射での注入やダーマペン、RFニードルでの導入も可能です。
ジュベルックボリューム
ジュベルックボリュームは1バイアル中に粒子径が40-60μmのPDLLAを170mg、非架橋ヒアルロン酸を30mg含んだ製剤となります。ジュベルックと比較し粒子径が大きく、量も多いため、皮下組織層をターゲットとした製剤となります。
ジュベルックボリュームは、コラーゲン生成を長期間にわたり強力に促進することで、こめかみや頬の自然なボリュームアップや、ほうれい線、ゴルゴライン、マリオネットラインといった深いシワの改善に高い効果が期待できる製剤です。コラーゲンだけでなく、皮下で脂肪細胞の増殖を誘導し、脂肪層にボリュームを出す働きもあると考えられています。こうしたエイジングケア目的だけでなく、ニキビ跡治療であるサブシジョンとの併用や、毛穴やクレーター改善を目的としたキュアジェットによる皮下注入など、幅広い用途で活用されています。
治療のスケジュールとしては、8週間ごとに3~回の施術を基本とし、その後は良い状態を維持するために1年半~2年ごとのメンテナンスをおすすめしており、効果の持続期間はおよそ18〜24ヶ月と言われています。肌の弾力やボリューム改善を目的とする従来のPLLA製剤(スカルプトラ)は、強い刺激により効果は高いものの皮下に硬結(しこり)ができやすいという問題がありましたが、ジュベルックボリュームはその副作用リスクを大幅に軽減した安全性の高い製剤として位置づけられています。ヒアルロン酸注入と比較した際の注意点としては、即効性がなく、専用の薬で溶かして元に戻すこともできないため、複数回の治療を通じて時間をかけながら徐々に変化を出していく必要があります。しかし、ご自身のコラーゲンが増えることによる極めて自然なボリュームアップが叶う点や、ヒアルロン酸よりも粒子が小さいため血管に詰まる(血管塞栓)リスクが極めて低い点は、ジュベルックボリュームならではの大きなメリットです。
ジュベルックボリュームのまとめ
- ボリューム減少の部位への注入が適応となります。
- 治療間隔は8週間毎、3~回が目安。その後は1年半~2年ごとがおすすめ。効果持続時間は18~24カ月。
- 注入層は皮下組織浅層(真皮などの浅い層ではしこりのリスクが高いです)
- 注入方法は25もしくは27Gのカニューレ
- 適応部位はほうれい線、頬(頬のコケやゴルゴライン)、額、こめかみ。
注入量の目安はこめかみ、ゴルゴライン、マリオネットライン、ほうれい線が両側で各2~4cc、頬4cc程。下眼瞼と鼻、顎、首注入不可(キュアジェットなどでの導入では鼻に行う場合があります)
ジュベルックボリュームとヒアルロン酸注入の違い
ヒアルロン酸とジュベルックボリュームはよく比較されるため違いについてのまとめとなります。
| 比較項目 | ジュベルックボリューム | ヒアルロン酸注入 |
|---|---|---|
| 主成分 | PDLLA+非架橋ヒアルロン酸 | 架橋ヒアルロン酸 |
| 作用機序 | 線維芽細胞を刺激してコラーゲン・エラスチンなどの生成を促進。脂肪細胞の増殖を誘導。 | 凹みやしわに注入をし、架橋ヒアルロン酸によりボリュームの充填を即時に行う |
| 注入層 | 皮下組織層 | 皮下組織層もしくは骨膜上 |
| 注入方法 | カニューレ | カニューレもしくは鋭針 |
| 効果発現タイミング | 直後は腫れにより効果があるように感じられる。実際は約1ヶ月以降(3回注入後に徐々に) | 注入直後 |
| 持続期間 | 約18ヶ月〜24ヶ月 | 約6ヶ月〜12ヶ月(製剤・部位により差あり) |
| 対応部位・用途 | 深いしわ(ほうれい線・マリオネット・ゴルゴ線)、額、頬やこめかみの凹み | 深いしわ、唇、涙袋、額、鼻など多部位 |
| 仕上がりの特徴 | 自身の組織に依存するため、効果がえられやすい方とえられにくい方がいる | 直後からはっきりとした効果が実感できる |
| 施術回数 | 8週間ごとに3~回が目安。その後は1.5〜2年に1回程度のメンテナンス | 回数は1回で良いが、ヒアルロン酸が分解されてしまうため、半年〜1年に1回程度の継続が必要。 |
| 塞栓リスク | 極めて稀に起こりうる | 稀にある |
PDLLA(ジュベルック・ジュベルックボリューム)の作用機序
加水分解による乳酸の生成による持続的な刺激
ジュベルックやジュベルックボリュームが体内に注入されると、PDLLA粒子が水分と反応しながらゆっくりと加水分解されていきます。この過程で、モノマー単位の「乳酸」が少しずつ生成されます。
生成された乳酸は皮膚内のpHを低下させ、微弱な炎症を起こすことでマイルドに線維芽細胞を刺激し、活性化させる働きがあります。活性化された線維芽細胞によりコラーゲン(特にI型)やエラスチン、ヒアルロン酸などの細胞外マトリクスを新生します。この反応が長期にわたり持続していきます。
PDLLA粒子に対するマクロファージの反応(抗炎症効果とコラーゲン生成)
PDLLA粒子は生体にとって異物と認識され、PDLLA粒子の周りにマクロファージが集まります。マクロファージの一部が組織の修復や抗炎症作用を担う「M2マクロファージ(2型マクロファージ)」へと変化(分化)し、TGF-β、IL-10といった抗炎症サイトカインや、PDGF、FGFといった成長因子を分泌します。
IL-10(インターロイキン-10)は炎症を抑える働きの強い非常に強力なサイトカインでTGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)は「炎症を抑える働き」と「コラーゲンなどを作らせて組織を修復する働き」を併せ持ちます。
PDGFは周囲から線維芽細胞や幹細胞を呼び込む働き(遊走・走化性)があり、FGF(線維芽細胞増殖因子)は線維芽細胞を増やし、血管新生を促す働きがあります。
これらの働きにより、注入部位の炎症を抑えることで、しこりのリスクを抑えながらコラーゲンの生成や組織の修復を行います。
PDLLA粒子による脂肪細胞の誘導
皮下組織層に注入された、ジュベルックボリュームにより、体内のマクロファージが刺激され、組織の修復や抗炎症作用を担う「M2マクロファージ(2型マクロファージ)」へと変化(分化)します。このM2マクロファージが活性化することで、FGF2などの様々な成長因子が豊富に分泌され、FGF2が、皮下組織にある脂肪幹細胞(ASCs)に働きかけ、その生存率を高めたり、増殖を強力に促し、脂肪細胞を分化・誘導する働きがあります。
PDLLA(ポリDL乳酸)、PLA(ポリ乳酸)、PLLA(ポリL乳酸)の違い
PDLLAはトウモロコシやジャガイモ、サトウキビなどのでんぷんを原料として処理をした成分で生体内では1~2年の時間をかけて水と二酸化炭素に加水分解され体内には残らない物質です。PDLLAはPLAの1種になります。PLAはポリ乳酸といわれ乳酸がエステル結合によって重合した高分子化合物のことをいいます。乳酸にはD体とL体という鏡像異性体が存在し、L体のみを重合させたものをポリL乳酸(PLLA)といい、D体のみをポリD乳酸(PDLA)、D体とL体がランダムに重合したものをポリDL乳酸(PDLLA)といいます。
ポリ乳酸(PLA)のうち、ポリL乳酸(PLLA)は「スカルプトラ」という商品名で商品化され以前から使用されています。この製品は米国のFDAにより「脂肪組織萎縮症」に対して、顔の脂肪の減少への治療のため承認を受けています。
PLLA粒子は尖ったクリスタル状で周辺の組織を物理的に刺激し続ける結果、修復や抗炎症作用のあるM2マクロファージではなく、攻撃や炎症作用のあるM1マクロファージが分化され、長時間働き続けてしまいます。一方のPDLLA粒子は丸く球体で滑らか で、内部はスポンジのような網目状になっています。物理的に周囲の組織を傷つけないため、注入時は異物反応としてM1マクロファージが分化されますが、PLLAのような周囲への刺激は少ないため、速やかにM2マクロファージへとスイッチを切り替わります。
表面積が大きく、先述のように炎症も強いため効果は高いものの、副作用として肉芽形成や皮下のしこりが生じやすい製剤となります。PLLAは未承認製品だとマックームというポテンツァのCPチップでの薬剤導入用の製剤がありますが、マックームは皮下への手打ちでの注入を行うことはできません。
ポリDL乳酸(PDLLA)は球形の粒子で内部が網目状となっています。分解の際に乳酸の出る量はPLLAと比べて多くないため、副作用が少なくポリL乳酸よりも安全に使用できるようになりました。効果の発現を実感できるタイミングとしてはポリ乳酸の分解が進み、コラーゲンの促進が促された結果効果が実感できるようになるため、注入から1ヵ月以降で効果をより実感できます。
副作用・注意点
- 注入後に赤みや軽度な腫れ(通常1~3日ほど)、内出血(1~2週間ほど)が出ることがありますが、自然に改善します。
- 注射後の洗顔は当日から可能ですがこすらないように注意が必要です。スキンケアやメイクは翌日から可能です。
- 飲酒、激しい運動、サウナ、入浴等は腫れや内出血が悪化するリスクがあるため、1週間程お控えください。
- 妊娠中・授乳中の方 、抗凝固薬を服用中(血が止まりにくいため)、免疫抑制剤を服用中(感染のリスクが高まるため)、ケロイド体質の方は施術は行うことができません。
- 治療部位に皮膚疾患や感染症のある方は症状が悪化するリスクや感染が他の部位に広がってしまう可能性があるため、施術を行うことができません。
- 稀ですが、アレルギー、感染、硬結のリスクがあります。極めて稀に血管内への注入により塞栓のリスクがあります。
しこりができる理由
「しこり」といわれるものの正式名称は「異物肉芽腫(Foreign body granuloma)」と呼ばれます。しこりは「体が処理しきれない異物を、コラーゲンの壁で閉じ込めて隔離しようとする『過剰な防御反応(カプセル化)』」をした状態です。
マクロファージの「貪食」の限界
通常、体内に異物が入るとマクロファージがそれを食べて(貪食して)分解・処理します。しかし、異物(粒子)が「大きすぎる」「尖っていて細胞を傷つける」「硬すぎて分解できない」といった場合、1つのマクロファージでは処理できないため、M1マクロファージによる炎症が長引いてしまいます。
「異物巨細胞(FBGC)」の形成
単独で処理できないとマクロファージが判断すると、互いに合体(融合)し、巨大な「異物巨細胞(Foreign Body Giant Cell)」へと変化します。この巨細胞が出現することが、しこり形成への大きなターニングポイントになります。
線維芽細胞の暴走と「被包化(カプセル化)」
異物巨細胞や、長引く炎症で集まったリンパ球などは、サイトカインを出し続けることで、これを受けた線維芽細胞は過剰に活性化し、異常なスピードで硬いコラーゲン線維(主にI型コラーゲン)を作り出します。そして、異物と巨細胞をぐるぐると何重にも取り囲んで分厚い壁を作ります(被包化)。
肉芽腫(しこり)の完成
中心に異物と巨細胞があり、その周囲をガチガチのコラーゲン線維が覆ったこの塊こそが「異物肉芽腫」であり、皮膚の上から触れた時に「しこり」として感じられるものの正体です。
目の下などのしこりのリスクについて
SNS等でジュベルック注入後に目の下にしこりができたといった報告をみたことがあるかもしれません。ジュベルックのしこりについて触れていきたいと思います。
ジュベルックのしこりの原因について考えられること
正規品ではない薬剤を使用している可能性
撹拌機が正規品ではない可能性
攪拌時間が短いなど正確なプロトコールに則っておらず、適切な希釈や攪拌が守られていない可能性
皮膚の薄い目の下への浅い部位の注入
特定の部位への過剰な量の注入
正規品ではない薬剤を使用している可能性
海外で製造された未承認医薬品が国内に入るためには「医師による個人輸入」が必要となります。その際に輸入代行業者にお願いをすることが多いのですが、製造元のメーカーから直接輸入される場合と、製造国内にある卸のような「代理店」から輸入される並行輸入代理店から輸入される場合があります。
依頼をする輸入代行業者によって直接輸入か並行輸入か選べる場合やどちらかしかできない場合があります。並行輸入の場合、製造元のメーカーのみから代理店が仕入れをしていれば問題はないのですが、流通量の規制などで異なる代理店からの仕入れをおこなっているなどの理由により「偽物の製剤」が紛れ込んでしまうと正規品だと思って個人輸入をしたのに偽物が届いてしまう可能性があります。
ED治療薬での報告になりますが、「インターネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品」という2016年に行われた調査で衝撃的な結果が報告されており、製剤の真贋も重要な要素だと思われます。 参照:インターネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品
撹拌機が正規品ではない可能性
薬剤同様、撹拌機そのものが偽物や他製品の攪拌用の機材を使用している場合があります。
攪拌時間が短いなど正確なプロトコールに則っておらず、適切な希釈や攪拌が守られていない可能性
メーカーが推奨とするプロトコールが守られていない可能性です。
皮膚の薄い部位(目の下)への浅い部位の注入
皮内注射といわれるような真皮浅層へのジュベルックの注入は薬剤が周囲へ拡散せず注入部に大量の粒子が留まってしまう可能性があります。大量の粒子が留まることで強い異物反応が生じ、しこりが生じるリスクは高まってしまいます。注入時に目の下問わず、膨疹をつくるような注入は避ける必要があります。
しこりの形成は目の下は特に注意が必要といわれています。皮膚が特に薄い部位といわれている、目の下に注入をすると、他部位では目立たないようなものでもしこりがはっきりと目立ちやすくなってしまいます。また、目の周囲は筋肉の動きで意図せず薬剤が特定の部位にあつまってしまうマイグレーションが生じる可能性があります。
水光注射時に浅めでの注入、膨疹を作るような手打ちでの注入は意図せずしこりをつくってしまうリスク要因となります。
特定の部位への過剰な量の注入
特定の部位への過剰な量を注入すると、その部位に過度な炎症反応が起こることでしこりとなる可能性があります。
しこりが出来てしまった場合の対処法
2か月以内
加温とマッサージ
振動機器
生理食塩水の注入
RFマイクロニードル
3カ月以降
ケナコルト(トリアムシノロンアセトニド)の注射
などが対応方法といわれていますが、ケナコルトは脂肪萎縮や白斑などのリスクがあるため注射には注意が必要です。目の下のしこりで眼輪筋内に形成された場合や大きさが大きい場合は切開での摘出術が必要となる場合があります。しこりはヒアルロン酸のみを主成分としたものではないため、ヒアルロニダーゼの注入では効果が得られないことが多いです。
参照
ジュベルック・ジュベルックボリュームについて
未承認医薬品等
ジュベルック・ジュベルックボリュームは医薬品医療機器等法上、未承認医療機器です。
入手経路等
当院医師の判断の元、国内販売代理店経由で個人輸入しています。
国内の承認医薬品等の有無
同一の成分や性能を有する他の国内承認医薬品等はありません。
諸外国における安全性等に関する情報
ジュベルック・ジュベルックボリュームは、韓国MFDSの承認を受けております。
