八王子駅南口徒歩二分の皮膚科、泌尿器科、内科クリニック

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肝斑

肝斑

30~40歳代の女性に多く見られ、頬骨部、口周囲など左右対称に出現する濃淡のある灰褐色斑です。はっきりとした発症の原因は不明ですが、紫外線が発症要因として重要な役割をしているといわれています。紫外線暴露以外に、妊娠、経口避妊薬、肌に合わない化粧品の使用、摩擦などの外部刺激が肝斑の悪化因子といわれています。肝斑部位では皮膚のバリア機能低下を合併しているといわれ、摩擦などのバリア機能を壊すことが肝斑悪化につながるといわれています。
肝斑は閉経後に自然に消失することもあり、エストロゲンやプロゲステロンによるエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体を介した色素細胞の活性化が関係していると考えられています。­

様々な刺激経路で角化細胞が刺激を受けるとプラスミンやプロスタグランジンを産生します。これらはメラノサイトを活性化させる因子の1つといわれており、慢性的な刺激などにより色素細胞が活性化されることで、メラニン生成が亢進し肝斑ができます。基底膜の破壊による真皮にメラノーシスや、真皮毛細血管の拡張、弾性線維変性などを合併することもあります。メラノサイトを活性化させる働きは表皮の角化細胞だけでなく、真皮線維芽細胞や毛細血管を含めた関与が考えられ、これらの細胞から分泌されるαMSH、ACTH、IL‐1、SCF、VEGFなどによりメラニン産生が亢進するといわれています。そのため、真皮や基底層のリモデリング治療が肝斑治療や再発を抑えるためには有効といわれています。

肝斑のある部位には老人性色素斑やADMなどが合併していることもあり、そのような場合では鑑別や治療が難しくなります。肝斑を目立たなくしようとし、擦り込むような化粧や、化粧水の過度なタッピング、強く擦るように化粧をおとす、たるみケアのためのローラーのやりすぎなどは肝斑治療の逆効果となるため控えた方が良いです。

治療

肝斑は肌の慢性的な炎症により色素が沈着してしまっている状態となります。炎症を抑える働きのあるトラネキサム酸の内服。沈着してしまっているメラニンの排出や新たなメラニンが出来にくいようにするトレチノインハイドロキノン療法。が主な治療法となります。施術では回数を重ねてメラニンを除去していく、レーザートーニングによる肝斑改善の報告もなされ行われています。
これらの治療は治療中は改善をしても、中止をすると再発をしてしまうという欠点や難治性の肝斑では効果が得られないこともあります。そのため、基底層周囲の真皮のリモデリングを行う治療が注目を浴びるようになりました。

当院では、肝斑の治療はトラネキサム酸の内服を行いながら外用治療もしくは真皮のリモデリングを促す治療の併用をおすすめさせていただいております。

治療方法

トラネキサム酸などの内服(内服が難しい場合は外用や局所注射も選択肢となります)
外用治療(トレチノインとハイドロキノン、ルシノール)
レーザートーニング
ピコフラクショナル
肝斑用の設定でのニードルRF治療(シルファームやポテンツァ)…当院では取り扱いがありません
ジュベルック

トラネキサム酸などの内服(内服が難しい際は外用や局所注射も選択肢となります)

トラネキサム酸は抗プラスミン作用やプロスタグランジンの産生を抑える働き(抗炎症作用)により肝斑の治療効果があるといわれています。トラネキサム酸にビタミンCとEを併用し服用することによりさらなる効果が期待されます。トラネキサム酸はこの働きによりレーザー治療など肌の炎症を抑え色素沈着のリスクを抑えることができるため、肝斑治療でピコフラクショナルなどを行う際は内服の併用がおすすめです。

トラネキサム酸はあくまでも抗炎症作用のため、肝斑を予防するために長期間飲む薬ではありません。予防目的であれば真皮のリモデリング治療がおすすめです。止血作用もあるため、稀ではありますが長期の内服により血栓症のリスクがあります。

経口避妊薬を内服されている方、妊娠中や妊活中の方、65歳以上の方、抗凝固薬内服中、心臓疾患のある方などは血栓症のリスクが高まるため内服は推奨されません(内服禁忌ではありません)。トラネキサム酸の内服量は500mg~/日、2ヵ月程度で内服効果が実感できるといわれています。

トラネキサム酸単独でで効果がない場合は、外用治療や真皮のリモデリング治療などを組み合わせた治療を行う必要があります。

外用治療

トレチノインとハイドロキノンを併用した治療を行います。刺激に弱い方ではルシノールでのケアを行っていきます。詳しい治療内容については以下のページになります。

レーザートーニング

レーザートーニングはQスイッチレーザーもしくはピコレーザーを使用し、低出力での中空照射を1~4週間毎に繰り返していく施術です。ピコレーザーを使用したものはピコトーニングともいわれます。レーザートーニングには色素細胞の活性を低下させ、表皮のターンオーバーを促進します。高出力かつ頻繁に繰り返しすぎると脱色素斑(白く色抜けする)ができることがあるため、肌診断機を定期的に使用して脱色素斑を早期に捉えるようにし、施術の間隔を空け脱色素斑をできにくくするといった注意をしながら回数を行う必要があります。

レーザートーニングのみでの治療では時間を要し、効果実感も乏しいことも多いため外用や内服を組み合わせて治療を進めていくことが多いです。

ピコフラクショナル

 真皮のリモデリングも肝斑治療には重要になります。1,064nmの波長をフラクショナル化し照射をするレーザーは肝斑に有効であるという報告と、悪化の報告があり、治療にあたっては出力には十分注意を払いながら治療を行う必要があります。
炭酸ガスレーザーのように肌に穴をあけ深部にエネルギーを届ける(アブレイティブフラクショナルレーザー)治療ではなく肌の表面には穴をあけず深部にエネルギーを届ける(ノンアブレイティブフラクショナルレーザー)治療のため、ダウンタイムが少ないことが利点となります。
ピコレーザーをフラクショナル化し、照射をすると衝撃波により真皮の組織内に空洞(LIOB: Laser-Induced Optical Breakdown)ができます。LIOBによる刺激で創傷治癒過程が惹起され、コラーゲンやエラスチンを増生し肌の再構築が促されます。ニキビ跡の治療目的の場合では高出力での照射をし、肝斑治療では刺激による肝斑悪化を避けるため低出力での照射を行います。

ピコフラクショナルはアジア人における顔面肝斑の治療における1064nmフラクショナルピコレーザーの有効性と安全性に関する研究では、4~6週間間隔での治療を9回行い、治療終了6週間後で70%が少なくとも中等度の改善を認めたと報告されています。1)

当院では肝斑へはピコトーニング単独で効果が得られにくい場合では、ジュベルックもしくは低出力のピコフラクショナルとピコトーニングを併用したピコダブルをおすすめさせていただいております。

肝斑用の設定でのニードルRF治療(シルファームやポテンツァ)…当院では取り扱いがありません

真皮のリモデリングのために剣山状の針を刺入し高周波による熱を加える治療法があります。肝斑治療専用のチップを使用し、熱を加える層も基底層周囲となるため肝斑治療に特化した施術となります。

ジュベルック

ジュベルックによる肝斑が改善したという報告があり、ジュベルックによる抗炎症作用や線維芽細胞活性化によるコラーゲン生成や真皮のリモデリングが関与している可能性があると考えられています。2,3)

参照

1)Christina S M Wong et al. Fractional 1064 nm Picosecond Laser in Treatment of Melasma and Skin Rejuvenation in Asians, A Prospective Study. Lasers Surg Med. 2021 Oct;53(8):1032-1042.

2)Suk Bae Seo et al. Preliminary Evaluation of Improvements in Melasma and Photoaging With Laser-Driven Microjet Injection of Poly- d , l -Lactic Acid. Dermatol Surg. 2025 May 1;51(5):505-508.

3)Jovian Wan, Kyu-Ho Yi. Efficacy of Subdermal Poly-d,l-Lactic Acid Injections for the Treatment of Melasma. J Cosmet Dermatol. 2025 Jan;24(1):e16650.

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