ヘルペス
概要
単純ヘルペスウイルス1型または2型の感染により、痛みを伴う浅い潰瘍性(ただれ)または水疱性の病変を形成します。一般的には1型はくちびるを中心とした顔面、2型は性器を中心とした下半身に多く発症するといわれていますが、オーラルでの行為により1型が性器周囲に、2型がくちびる周囲に感染することがあります。
性器に感染すると、神経をつたい上行し、主として腰仙髄神経節などに潜伏感染をします。潜伏感染した単純ヘルペスウイルスは、症状がなくても体内に潜んだ状態となり、疲労やストレスなどの何らかの刺激によってウイルスが再活性化すると、神経を伝わって下行し、再び皮膚や粘膜に症状を起こしてしまいます。ヘルペスの60~70%は再発による症状といわれています。
単純ヘルペスウイルスは多くの人が既感染で唾液中に混ざっていることが多く、口唇や太もも、臀部、肛門にできることもあります。現在使用される抗ウイルス薬は潜伏感染しているヘルペスウイルスのDNAの排除はできないため、体内からの完全な除去はできません。
潜伏期間
感染から症状が出るまで3日~7日
検査可能時期
感染部位の検査は症状がある場合検査可能、既感染かどうかの血液での検査は1か月経過してから
感染部位
皮膚、粘膜
感染経路
性器への感染は通常は性的な接触により感染をします。単純ヘルペスウイルスの症状が出ている人や症状がない人でも皮膚や粘膜、分泌物に単純ヘルペスウイルスが含まれている場合、接触することで感染をしてしまうため、通常の膣性交だけでなく、オーラル(フェラチオやクンニリングスなどの口腔性交)やアナル(肛門性交)での感染もします。
口唇ヘルペスがある人とのオーラル(フェラチオやクンニリングスなどの口腔性交)により単純ヘルペスウイルス1型が性器や肛門周囲、乳頭周辺に感染することや、性器や肛門周囲から口周りへの感染をすることもあります。
症状
皮膚や粘膜に感染をします。性器ヘルペスの場合、性器周辺への感染をさしますが1型か2型かは問いません。男性では性器や肛門周辺など。女性では膣周囲や肛門、子宮頸部などに感染をします。臀部や大腿にも症状が出現することがあり、感染部位に水疱性の病変(みずぶくれ)もしくは潰瘍(ただれ)を形成し、痛みを伴います。初回感染では特に症状は強く出て、強い痛みや発熱、リンパ節の腫脹などおこすことがあります。
水膨れができる前にピリピリ、ムズムズなどの前駆症状が出現し、その後1日以内に赤く腫れ水膨れができてきます。この時期はウイルスの増殖が活発なため、可能な限り早く治療を行うことでウイルスの増殖を抑えることができます。水膨れができると、水膨れの中にはウイルスがたくさん存在するため、周囲へ感染をしやすい状態となります。その後水膨れが破れて潰瘍化し、次第にかさぶたができ治っていきます。
検査および治療
症状がある場合、皮膚擦過による抗原検査(イムノクロマト法)で水疱やただれのある部位のぬぐい液である皮膚擦過物で、20分での判定が可能であるが病変や症状が乏しい場合は検査で陰性と出ることもあります。
症状がなければ採血による抗体検査がありますが、血液検査による抗体検査の場合は感染機会から1か月経過しないと陽性となりません。血液検査の結果が陽性だったとしても口唇ヘルペスと性器ヘルペスの区別ができず、過去に水疱瘡の罹患歴がある場合も稀に陽性と出てしまう可能性(偽陽性)があります。抗体検査が陽性のときは過去に感染があったことの証明(いつの感染かまでははっきりしない)にすぎず、感染機会時点で陰性でない限りは機会の特定をすることはできません。
他の検査方法として、1型か2型の感染かそれぞれ検査をする型別抗体検査、免疫グロブリン検査(EIA法)があり、IgM抗体(発症1週間以内に出現し1~2週間でピーク、2か月程で下降)が陽性かつIgG抗体(発症1週間ぐらいから上昇し、2~4週間後にピークとなり抗体価は徐々に低下するが維持される)が陰性時に初感染と診断することができます。
治療は抗ウイルス薬の内服、外用となります。
内服薬はバラシクロビル、アシクロビルなどが使用されます。軽症時は局所療法として、5%アシクロビル軟膏を 1日数回、5~10日間塗布し治療を行います。
再発性ヘルペスに対するPIT療法と再発抑制療法
PIT療法は、事前に処方された薬剤(ファムビル:ファムシクロビル「ジェネリックには保険適応がないです」を初回4錠内服し12時間後に4錠内服をします、アメナリーフ:アメナメビルは1回3錠を食後に内服します。)を初期症状が出現した際に6時間以内に患者自身の判断で内服を開始する治療法のことをいいます。
再発抑制療法は、バルトレックス:バラシクロビルを1日1錠、1年間内服し続ける治療で、再発時は1日2錠にし治ったら1日1錠に戻し内服を続けます。
保険での処方も可能となります。