医療脱毛について

日本国内で脱毛というと医療脱毛とエステ脱毛があります。医療脱毛は「永久脱毛」を目指した脱毛になり、エステ脱毛は「減毛・抑毛」を目的とした脱毛になります。本ページでは医療脱毛についてをまとめたページとなります。エステ脱毛については下記ページをご参考ください。

エステ脱毛について

脱毛には永久脱毛を目指す脱毛の「医療脱毛」と、減毛・抑毛を目指す脱毛の「エステ脱毛」があります。このページではエステ脱毛について説明したいと思います。 永久脱毛…

レーザーやIPLによる脱毛はメラニン(黒色)に反応しやすい波長のレーザーを皮膚に照射をすることで、毛乳頭、バルジ領域などの毛周囲の発毛に関する組織を熱で破壊することで毛が生えてこないようにする治療になります。

毛には毛周期といって毛の生え変わりのサイクルがあります。レーザー脱毛で破壊できる毛は毛周期のうちの「成長期のみ」で全体の毛の約20%程度といわれ、1回だけでは毛を生やすための組織すべてを壊すことはできません。休止期や退行期だった毛が成長期となる2か月程の期間を開け照射回数を重ねていくことによって、徐々に生えてくる毛が減っていきます。

脱毛に必要な回数は脱毛部位や毛根量などにより様々です。また、どの程度の毛の状態をゴールとするかによっても必要な回数は変わります。レーザーやIPLによる脱毛はメラニンが含まれない白い毛には反応しないため脱毛をすることが出来ません。白い毛への脱毛にはニードル脱毛(医療針脱毛)を行う必要がありますが強い痛みを伴うのと施術に時間を要します。

レーザー脱毛とIPL脱毛の違い

レーザーは単一の波長で指向性が高くまっすぐに進みますが、IPLでの光は様々な波長を含み、周囲に広がります。日本ではレーザー脱毛機で承認を受けている機種はレーザー脱毛機のみですが、海外ではIPL脱毛機とも医療用のものが存在します。

IPLは様々な波長を含んだ光が照射されるため、毛根周囲を破壊するのに最適な波長のフィルターを選択することで脱毛を行うことが可能となります。米国ではFDAの承認を得たキュテラ社のプロウェーブ、シネロン・キャンデラ社ノーリスのなどがあります。しかしながら、日本国内で長期減毛効果での薬事承認を得たIPL脱毛機は存在しない(他の治療用途での承認を得ているIPLは存在する)ため、IPL脱毛はエステ脱毛という印象が強いです。

IPL脱毛の光はレーザー光と違い周囲に広がる性質があります。照射時に皮膚と隙間ができてしまったり、肌に対し斜めにプローブを当て、一部が浮いた状態で照射を行うと光が周囲に拡散してしまい出力が大きく低下してしまうため施術者の技術も大事になります。日本国内で承認機での施術を希望する場合は、使用機種についてクリニックで確認をする必要があります。

クリニックに承認機と未承認機がおいてある場合、コース契約の内容次第では機種を選べない可能性もあるため、契約前に確認をすることが必要となります。

医療脱毛で目指す永久脱毛とは?

医療脱毛で行われる脱毛の種類としては、レーザーやIPLによる脱毛、ニードル脱毛(医療針脱毛)になり、日本ではほとんどがレーザー脱毛になります。エステ脱毛で行われる脱毛は光脱毛(IPL脱毛、SSC脱毛)、ワックス脱毛、美容電気針脱毛などになります。医療脱毛は「永久脱毛」を目指した脱毛になり、エステ脱毛は「減毛・抑毛」を目的とした脱毛になります。

永久脱毛とは?

永久脱毛の定義は、日本では特に定まっておらず、米国の基準を参考とします。

AEA(米国電気脱毛協会):最終脱毛から1ヶ月後の毛の再生率が20%以下の状態
FDA(アメリカ食品医薬品局):3回照射後、6ヶ月経過した時点で67%(2/3)以上の毛が減っている状態

上記の状態のことをいい、生涯毛が生えてこない状態を目指すものではありません。

エステ脱毛で使用している脱毛機は永久脱毛を目指せないの?と思うかもしれません。永久脱毛は毛を作る毛根および毛根周囲の組織を破壊する治療なので医療行為になるためエステサロンでは行うことができません。エステ脱毛は一時的な「減毛・抑毛」を目的とした脱毛のことをいい、毛を作る毛根および毛根周囲の組織は破壊しないため、一時的に毛を生えにくくする効果のあるものとなります。

平成13年11月8日に「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線またはその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為は、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反する。」という厚生労働省医政局医事課課長通知(医政医発第105号)が出されました。

エステサロンでは医師免許をもった有資格者が在籍していないため、脱毛は毛根破壊するほどの出力での照射をすることができないとされています。エステサロンでの脱毛は痛みについて医療脱毛より少ないのですが、効果は照射に伴う一時的な制毛効果になり、しばらく期間を開けるとまた毛が生えてきてしまいます。看護師が運営、施術を行うエステサロンがありますが、医師は在籍していないため医療脱毛を行うことはできません。

医療脱毛、エステ脱毛にかかわらず脱毛後は毛包炎や発赤、腫れなどが生じることがあります。また、過剰なクーリングによる凍傷や毛根を破壊できない出力であってもスキントーンや肌質の違い、照射時の冷却が不十分であったり、同じ個所を連続で照射を繰り返したりをすると毛根周囲だけではなく皮膚に負担がかかってしまい、皮膚の火傷につながることがあります。エステ脱毛ではこういった脱毛に伴うスキントラブルの際の診察や治療を行うことができませんが、医療脱毛では医師による診察と治療が可能です。

毛の構造と毛周期

毛は皮膚より上の部分を「毛幹」、皮膚より下の部分を「毛根」といいます。「毛包」といわれる毛根を取り囲む組織内で毛は作られます。成長期の毛の付け根のふくらみ部分を「毛球」と呼びます。毛球の中央を「毛乳頭」と呼び、その周りを「毛母細胞」が覆い、その周囲に「メラノサイト」が存在しています。毛乳頭は毛母細胞を栄養する働きがあり、毛母細胞が分裂増殖することで毛は伸び、メラノサイトが分泌するメラニンによって毛に色が付きます。

毛包内の立毛筋が付着する部位に「バルジ領域」といわれる部位に色素幹細胞と毛包幹細胞が存在するといわれています。これらの幹細胞は成長期になると毛球部へ移動をし、分裂増殖をすることで毛が作られていきます。

毛には毛周期という生え変わりのサイクルがあり、これを繰り返しています。毛周期は成長期、退行期、休止期を経て脱毛し、しばらくしてから再び成長期となります。各周期の説明は下記になります。

成長期

毛母細胞が分裂を繰り返し毛が作られている時期です。毛乳頭と毛根が近くにあり、毛乳頭から豊富な栄養を受け毛母細胞は分裂を繰り返し毛は成長していきます。

退行期

毛包が収縮し細胞分裂が停止し、休止期へ移るための時期で数週間程といわれています。毛包が収縮しはじめると、毛根と毛乳頭が徐々に離れていくことで、毛母細胞への栄養がいかなくなり細胞分裂が停止し、毛球部が小さくなります。

休止期

細胞分裂が停止し、毛を作らない時期です。毛包は収縮し毛隆起部(バルジ領域)付近まで小さくなり上昇します。毛と毛乳頭が完全に離れた状態になります。しばらくすると毛は抜け落ち、次の毛が成長するまでの準備期間となります。

熱破壊式でのレーザー脱毛は毛と毛乳頭が近くにある、「成長期の毛」に効果を発揮します。見た目だけでは成長期、退行期、休止期の区別をすることはほぼ不可能です。

脱毛の原理

レーザー脱毛はレーザーによる熱エネルギーで毛包の毛乳頭や毛母細胞、バルジ領域にある色素幹細胞と毛包幹細胞などの毛周囲の「発毛に関する組織」を熱破壊することで毛が生えてこないようにする治療になります。

部位や毛質による難易度

脱毛の効果の実感は全身同じ一定の効果実感ではなく、部位や毛質によってその効果に違いが出てきます。

皮毛角

皮毛角は皮膚に対する毛の生える角度になります。皮毛角が大きい毛=垂直に生える毛を意味します。皮毛角が大きい毛のほうが脱毛の効果が得られにくいといわれています。

皮毛角が大きいと毛根が深くなるため、レーザーの深達性が低い波長では十分な脱毛効果が得られなくなる可能性があります。また、真上からみた際の垂直投影面積が小さくなるため、脱毛に十分な熱量が加わりにくくなります。

皮毛角が小さいと毛根は浅くなるため、レーザーの深達性が低い波長でも十分な脱毛効果が得られ、真上からみた垂直投影面積が大きくなるため脱毛に十分な熱量が加わりやすくなります。

皮毛角が大きい部位

顔(特に鼻下、顎回りといった口周り)
背中
二の腕
大腿

などがいわれています。硬毛化しやすい部位でもあるので脱毛の仕方(機種選択、パラメーター設定)には注意が必要となります。

脱毛間隔と回数

毛には毛周期があり、毛周期のうち脱毛に効果的な時期は成長期といわれています。部位により異なりますが毛全体の約20%程度といわれ、このことが脱毛は1回で終わらない理由になります。成長期や休止期の期間は部位により違いはありますが、熱破壊式、蓄熱式ともに6~8週間の間隔(顔はさらに短く4週間)をあけての照射を繰り返し行っていきます。必要な回数の目安としては5~8回程度で、部位や個人差、毛のゴールの状態により必要な回数がさらに必要となる場合もあります。

産毛、皮毛角が大きい毛(皮膚に対して垂直に生えている毛)、皮膚が厚い部位では脱毛が難しいといわれています。皮毛角が大きく深さが深い毛の場合は毛乳頭が皮膚の深くにあるため、レーザーの深達度の深いヤグレーザーもしくはダイオードレーザーでの脱毛が必要となります。

毛の太さについては産毛のような細い毛ではメラニンの含有量が少なくなるため発熱量が少なくなり、毛包周囲を壊すための十分な熱エネルギーに至らず脱毛ができない場合があります。十分な熱エネルギーに到達するために、出力を上げたりパルス幅を短くする必要がありますがそれに伴い火傷や硬毛化のリスクも高まります。

男性の髭脱毛はヤグの熱破壊式がいい、産毛に対して熱破壊式よりも蓄熱式の方が効果を実感しやすいといわれる理由の由来でもあります。

脱毛後の毛の抜けるタイミング

医療脱毛の後は毛が自然と抜け落ちていきます。熱破壊式と蓄熱式とでは毛の抜けるタイミングが異なります。

熱破壊式での脱毛後は直後に「ポップアップ現象」といいレーザーの照射直後に毛がピョンっと飛び出した状態になります。レーザーを照射すると毛のメラニンに反応し、毛根が瞬間的に加熱され、毛根周囲の水分が膨張することで毛が毛穴から飛び出てきます。蓄熱式では徐々に熱を加えていくため、瞬間的な加熱はされずにポップアップ現象は起きにくいといわれています。また、産毛ではメラニン量が少なく熱エネルギーが少ないため、起きにくいといわれています。

ポップアップ現象がないからといって脱毛効果がないというわけではありません。同様にポップアップ現象を起こしたから脱毛できたというわけではありません。

脱毛後の毛の抜けるタイミングは、熱破壊式では数日から2週間かけ、自然に抜け落ち、蓄熱式では2週間から4週間程度かけて自然に抜け落ちていきます。

照射後は休止期の毛が成長期となり毛が生えてくることによって毛は再び生えそろっていきます。

照射漏れといわれる状態は毛が抜け落ちる期間を経過しても、線状やまとまりで不自然に毛が残っていたり、伸びてくる場合は照射漏れの可能性があります。

照射漏れで再照射の補償がある場合、剃毛をせずに来院してくださいといった指示があるかと思います。理由としては、剃毛をしてしまうと「照射漏れかどうかの診断ができない」こと、マーキングをした上で照射漏れと考えられる部分のみの照射を行わないと、「短期間での再照射により火傷などの皮膚トラブルリスクが高まるから」です。 

レーザー脱毛の種類と設定

脱毛機の種類は製造メーカーによる工夫などは多々ありますが、大きくは
「どの波長を使用する脱毛機か?」「どのタイプの冷却システムか?」になります。

照射方法は「蓄熱式」もしくは「熱破壊式」になります。

照射設定は「出力」「パルス幅」をどのように設定し照射をしていくか、になります。

使用する波長の特徴

ヤグレーザー (1064 nm)

ヤグレーザーの1064 nmという波長は、皮膚への深達性が脱毛で使用される波長の中で最も高いという特徴があります 。皮毛角が大きい垂直に生えるような毛(髭など)など真皮の深部に位置する毛包を標的とする場合に適しています。  

メラニン吸収の特性に関して、ヤグレーザーはアレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーと比較してメラニンへの吸収率が低いレーザーになります。表皮のメラニンによる吸収が少ないため、ヤグレーザーはスキントーンが暗め(肌が暗めの色調、フィッツパトリック分類Ⅳ-Ⅵ型)でも安全に治療ができ、火傷や色素沈着を引き起こすリスクを抑えることができます。

ダイオードレーザー (800-810nm)

ダイオードレーザーは一般的に800-810nmの波長範囲で、アレキサンドライトレーザーと比べて深達性が高いです。機種によっては、755nmとアレキサンドライトレーザーと同じ波長や、1064nmとヤグレーザーと同じ波長を出力することができます。

単一波長ではなく、3波長の同時照射が可能なダイオードレーザー(Soprano Titanium「ソプラノチタニウム」)では、755nm、810nm、1064nmの波長が含まれています。ダイオードレーザーの波長はアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの中間に位置しており、メラニンへの吸収率と深達性のバランスが取れた治療が可能となります。

ダイオードレーザーを使用した機種には蓄熱式と熱破壊式の両方の脱毛方式が可能となる機種もあります。

アレキサンドライトレーザー (755 nm)

アレキサンドライトレーザーは、メラニンに非常に吸収されやすい755 nmの波長のレーザーとなります。ダイオードレーザーやヤグレーザーと比較して、皮膚への深達度は浅いです。アレキサンドライトレーザーは、特に皮膚の表面に近い毛包を標的とするのに効果的です。  

755 nmの波長はメラニンに良く吸収されるため、スキントーンが明るめ(明るい肌、フィッツパトリック分類I-III型)に適し、毛質としては細い毛~太い毛に効果的に作用します。スキントーンが暗め(暗めの肌、フィッツパトリック分類IV-VI型)の人には、火傷や色素沈着のリスクが高いため、ヤグレーザーでの脱毛が適しています。

アレキサンドライトレーザーは治療前に肌タイプの評価が重要となります。  

熱破壊式と蓄熱式脱毛法の比較

熱破壊式

高フルエンスのレーザーを照射することで毛根のメラニンに吸収され、熱エネルギーとなります。パルス幅の長いレーザーを照射すると、毛根周囲に熱が拡散するため、周囲の組織に熱が伝わることで毛根だけでなく毛根周囲の組織も破壊することができる、毛乳頭などの発毛に関する組織が破壊されます。

皮膚をクーリングし1発1発ごとムラのないようにレーザーを照射していきます。クーリングの仕方は冷却装置を皮膚に触れて照射をする接触型、冷却ガスを吹き付けて冷却をする冷風型があり、機種によってはジェルを使用する場合もあります。レーザーはまっすぐと直線的に進むため、レーザーを照射するハンドピースを皮膚に対して垂直に照射をする必要があります。斜めでの照射だとターゲットとする深さまでレーザーが到達しない可能性があります。そのため、施術者の技量によって脱毛効果に違いが出ることがあります。

熱破壊式脱毛は毛根と毛乳頭の距離が大事になります。成長期以外の毛では毛根と毛乳頭が離れているため、熱エネルギーが毛乳頭まで拡散せず、脱毛効果が得られない状態の毛となります。毛周期を考えた複数回の脱毛が必要となります。

太く黒い毛では治療直後にポップアップ現象といわれる、毛がぴょんと飛び出た状態となります。多くの毛は治療後1〜2週間以内に毛が抜け始めることが多いです。毛が早い時期に抜け落ちることで、治療効果がより早く視覚化されます。照射漏れがあるとその部分だけ抜け残りが生じてしまうことがあります。

通常はゴムで弾かれたような痛みを伴います。高エネルギーでの照射となるため、蓄熱式と比べて火傷や色素沈着のリスクが高い治療となりますが、スキントーンが暗めの方へのヤグレーザーでの脱毛といった肌タイプによって適した脱毛機を選択することでリスクを抑えた効果的な脱毛が可能となります。

蓄熱式

低フルエンスのレーザーを高繰り返し照射をしていくことで、発毛に関する組織(毛母細胞や毛乳頭など)を標的として破壊する照射方法となります。バルジ領域の破壊により脱毛効果が得られると説明をしているホームページもありますが、「ダイオードレーザー(810nm)による蓄熱式脱毛後、組織学的検査により毛包周囲の浮腫性変化を認め、毛包の解剖学的変化が脱毛効果の原因となった可能性を示した。」1) ということから、バルジ領域といわれる特定の領域だけではなく毛包周囲の組織破壊による効果となります。そのため、毛周期を意識した施術間隔で行うことが重要で、短期間での治療は結果に悪影響を及ぼす可能性があります。

一般的に、痛みは少なく、温かいまたはチクチクする感じと表現されることが多いです。毛は2~4週かけて徐々に抜けていくため、目に見えるまで熱破壊式と比べて時間を要します 。ダイオードレーザーが主に使用され低フルエンスでの照射のため、肌の色が濃い場合でも安全に使用できます。

蓄熱式脱毛(SHR方式)は主にダイオードレーザーが使用されます。ダイオードレーザーでの蓄熱式脱毛では皮膚の上にジェルを塗り、接触型の冷却装置を使用し(大部分はハンドピース部、もしくはその周囲に冷却装置が付いています)クーリングをしながら、熱破壊式時より出力を下げた低出力で、一定のパルス(照射間隔)で皮膚の上を滑るようにハンドピースを動かし、レーザーを繰り返し照射していきます。皮膚に均一に一定量のエネルギーが加わるように1カ所あたり複数回照射を行います。じわじわと皮下の毛周囲に熱を蓄えていき、毛根周囲を加熱していきます。満遍なく同じ部分を何往復もする必要があるため、「プローブを動かす速さを一定にし」、「満遍なく全範囲を照射し」、「プローブの角度などをきをつけること」が要求され、施術者の技量によって脱毛効果に違いが出ることがあります。

出力とパルス幅

同一機種での脱毛でもクリニックにより設定に若干の違いがあります。出力について出力を上げると火傷などスキントラブルのリスクも上がるため、肌の状態(乾燥していない、日焼けしていないなど)も大変重要となります。

レーダー脱毛における出力(フルエンス)

出力はフルエンスとも呼ばれ、単位面積あたりに照射されるエネルギー量で、通常はジュール毎平方センチメートル(J/cm²)で表記されます。フルエンスは治療における、効果的な脱毛のための重要なパラメータの1つです 。フルエンスは毛包内で生成される熱量を決定します。適切な熱量は毛包周囲の熱変性を引き起こし、発毛に関する組織(毛母細胞や毛乳頭など)を標的として破壊します。出力が低すぎると効果がない可能性があり、高すぎると火傷などのスキントラブルにつながる可能性があります。  

高い出力(より高いフルエンス)は、毛包内でより多くの熱を生成することにより、より効果的な脱毛になるといわれています 。皮膚がスキントラブルなく耐えられる出力レベルが適切な出力となるため、肌の状態によっては火傷とならないようにするために、出力を下げないといけなくなると脱毛効果が落ちる可能性があります。

レーダー脱毛におけるパルス幅

パルス幅はパルス持続時間とも呼ばれ、標的組織がレーザーエネルギーに曝される時間をいいます。パルス幅は周囲の皮膚に過度の損傷を与えることなく、エネルギーが毛包に効果的に吸収され、発毛に関する組織(毛母細胞や毛乳頭など)を破壊するための重要なパラメーターの1つです。  

適切なパルス幅の選択は、異なる直径の毛を標的とする上で不可欠な知識になります 。短いパルス幅での照射は、急速に加熱されるが熱を保持できない細い毛に適しています。長いパルス幅は、ゆっくりと加熱されるため、太い毛に適しているといわれています。

熱緩和時間(TRT)とは、ある対象が熱せられた後、温度が半分まで下がるのに要する時間のことをいいます。熱緩和時間よりも短い時間で照射を行えば、拡散による周囲組織への熱によるダメージを抑えることができると考えられています。脱毛では毛そのものを壊すのではなく、毛根周囲の発毛に関する組織を壊す必要があるため、パルス幅が短ければいいわけではありません。

表皮の熱緩和時間が3~10msec、メラニンを含む毛の熱緩和時間が直径に応じて40~100msecといわれています。このことから、理想的なパルス幅は大体10~50msecと考えられていますが、表皮の熱緩和時間よりも長いため、表皮の熱変性を抑えるため皮膚表面を冷やす冷却装置が必要となります。

一方で短すぎるパルス幅は硬毛化のリスクを高めるといわれています。

理論的な話では、脱毛を進めることで細い毛が残った状態となると、効果的な治療のためにパルス幅を短くするといった調整が必要となる場合があります。一方で、短いパルス幅では硬毛化のリスクが高まるというジレンマがあります。

選択された波長で最適な出力、パルス幅での照射がなされているのに脱毛が進まない場合は、皮毛角が大きいために毛包が深い位置にある毛の可能性があります。こういった毛の脱毛をする場合は、無理に出力を上げるのではなく波長を変える(機種を変える)というのも大事になります。

髭脱毛や口周りの脱毛で、ヤグレーザーの照射をしてくれるクリニックが抜けるか?というと、出力が不十分だと全く抜けません。使用するレーザーだけで脱毛クリニックを決めるのでなく施術者が調整を行うクリニックかどうか?がとても重要になります。

医療レーザー脱毛機の種類と波長

承認機の機種について代表的な機種が下記のものになります。

アレキサンドライトレーザー

GentleMax Pro Plus(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) シネロン・キャンデラ社

GentleMax Pro(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) シネロン・キャンデラ社

GentleLase Pro(755nmのAlex) シネロン・キャンデラ社

エリートiQ(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) サイノシュア社

エリート+(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) サイノシュア社  

SPLENDOR X(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG)  株式会社日本ルミナス

Excel HR(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) キュテラ株式会社

Motus AX (モータスエーエックス) (755nmのAlex, 蓄熱式) DEKA社

ダイオードレーザー

Soprano Titanium(ソプラノチタニウム) アルマレーザーズ社

ヴィーナスワン EPJメディカルサービス株式会社

メディオスターモノリス 株式会社メディカルユーアンドエイ

メディオスターネクストプロ 株式会社メディカルユーアンドエイ

LightSheer Quattro(ライトシェアクアトロ) 株式会社日本ルミナス 

LightSheer Duet(ライトシェアデュエット) 株式会社日本ルミナス

ヤグレーザー

GentleYag pro (1064nmのNd;YAG) シネロン・キャンデラ社

GentleMax Pro Plus(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) シネロン・キャンデラ社

GentleMax Pro(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) シネロン・キャンデラ社

エリートiQ(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) サイノシュア社

エリート+(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) サイノシュア社  

SPLENDOR X(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG)  株式会社日本ルミナス

Excel HR(755nmのAlex, 1064nmのNd;YAG) キュテラ株式会社

アレキサンドライトレーザーはメラニンの吸収率が高く、ヤグレーザーと比べて痛みが軽度のため一般的には効果的な脱毛を行うことができます。男性の髭など皮毛角が高く、毛根が肌の深部に存在する場合ではレーザー光線が到達できず、脱毛できない場合があるため、ダイオードやヤグレーザーでの脱毛の切り替えが必要となります。

シネロン・キャンデラ社のジェントルマックスプロおよびジェントルマックスプロプラスが脱毛機では日本では有名な機種になります。同じ波長を使用した機種ではサイノシュア社のエリートiQおよびエリート+、キュテラ社のExcel HR、日本ルミナスのSPLENDOR Xがあります。全てアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーを切り替えることができる熱破壊式の脱毛機になります。SPLENDOR Xは2波長同時照射も可能となります。

波長が805nmの照射が可能な日本ルミナスのライトシェアデュエット、805nmと1060nmの2つの波長を切り替えて照射が可能なライトシェアクアトロは熱破壊式の脱毛機になります。810nmと940nmの2つの波長を同時に照射できるエスクレピオン社開発のメディオスターネクストプロとメディオスターモノリスは蓄熱式と熱会式の切り替えが可能な脱毛機になります。3波長(アレキサンドライトレーザーと同じ755nm、ヤグレーザーと同じ1064nm、ダイオードレーザーで実用化されている波長の1つの810nm)を同時照射をするAlma社開発のソプラノチタニウムは蓄熱式と熱破壊式の切り替えが可能な脱毛機になります。ヴィーナスワンは3波長(アレキサンドライトレーザーと同じ755nm、ヤグレーザーと同じ1064nm、ダイオードレーザーで実用化されている波長の1つの808nm)を同時照射をし、蓄熱式と熱破壊式の切り替えが可能な脱毛機になります。

機種により波長だけでなく照射可能のパルス幅や出力の範囲、スポット径が異なります。

照射による副作用、リスク、注意点

硬毛化

海外ではParadoxical Hypertrichosisともいわれています。レーザー脱毛などの治療後に、毛の減少とは反対に、毛の成長が促進されてしまった状態のことをいいます。治療部位において、以前には存在しなかった毛が「濃く、太く、あるいは量が増加する」という形で出現します。原因についてははっきりとしたことはわかっていませんが、低出力での照射やパルス幅が短い照射でおこりやすいといわれています。

硬毛化を起こさないためにはスキンタイプに合った波長のレーザーで、保湿や日焼け対策などをしっかりと行い適切な設定での照射を行うことが脱毛効果を最大化させ、硬毛化を避けるために重要となります。

起きやすい部位としてはフェイスラインなどの顔、首、上腕、背中、肩、うなじ、二の腕、大腿が起きやすいといわれています。起きやすい部位は、毛自体のメラニン量が少ない産毛で皮毛角が大きい部位になります。

硬毛化がおきてしまった際は、毛根への刺激を避けるために1度脱毛をお休みする。深達度の高い波長(ヤグレーザー、ダイオードレーザー)で、出力を高め、パルス幅を長めに設定した照射。ニードル脱毛への変更により改善されることがあるといわれています。

赤み・腫れ

頻度として多いものは照射後の赤みや腫れになります。冷やすことで当日~2日で落ち着いていきますが、数日続く場合は火傷の可能性もあります。

毛嚢炎(毛包炎)

毛嚢炎は皮膚の表面にいる常在菌(黄色ブドウ球菌やマラセチア菌など)が原因となり、毛包で炎症をおこした状態のことをいいます。乾燥や擦り傷、かみそり負けなどによって皮膚や毛包部にできたわずかな傷から菌が感染し炎症を起こします。毛穴に一致した赤いプツプツを認め、プツプツに中に白い膿を含むことがあります。毛嚢炎は摩擦の多い首や皮脂・汗の多い背中、蒸れて菌の増えやすい陰部やおしり、男性の髭(剃刀後)などに出来やすいといわれています。

レーザー脱毛による毛嚢炎は、レーザーを照射し毛包に熱が加わることで炎症が生じるため、直後から毛嚢炎が起こることがあります。また、レーザー照射により一時的に皮膚のバリア機能の低下や毛包が刺激を受けることで、皮膚の表面にいる常在菌が毛包内で感染と炎症を起こしやすくなり、数日から1,2週間程度で毛嚢炎になることがあります。

毛嚢炎は痛みや痒みを伴うことがあります。できてから1週間程で自然に治ることもありますが、悪化すると膿がたまり「せつ」や「よう」といった硬いしこり状になることがあります。また、稀ですが毛嚢炎から皮下組織周囲まで感染、炎症が拡大し蜂窩織炎になることがあります。「せつ」や「よう」では切開で膿を出す治療が必要となる場合や色素沈着が残る場合があります。蜂窩織炎では抗生物質の内服もしくは点滴での治療が必要となることがあります。

レーザー脱毛による毛嚢炎の予防には、保湿や紫外線対策など肌の状態を良い状態に保つ、清潔な状態を保つことが重要になります。毛嚢炎は皮膚が傷つくことでできるので、剃毛時は剃刀ではなく電気シェーバーなどを使用し、毛穴に負担の少ないものでの自己処理や、照射後は入浴を避けて肌を清潔に保つ必要があります。

毛嚢炎が出来てしまった際は赤みや痛みなど必要に応じて、抗菌薬の外用や内服での治療を行います。

火傷

火傷は皮膚がダメージを負った深さにより症状が異なります。表皮のみの火傷(Ⅰ度熱傷)では皮膚が赤くなり、ひりひりとした痛みがあり、脱毛直後の赤みと見分けがつきにくい場合があります。脱毛をして数日経過しても赤みやひりひり感が残っている場合は火傷の可能性があります。自然に治ることも多いですが、炎症後色素沈着を起こすことがあり、必要に応じてステロイド軟膏などを使い治療を行います。

水ぶくれができる場合は真皮にまで及んだ火傷(Ⅱ度熱傷)です。薄赤色の浅いSDB、白色の深いDDBに分けられます。Ⅱ度熱傷ではワセリンやハイドロコロイドでの被覆を行います。SDBでは1-2週間程で水疱の内用液が吸収されていき上皮化していき、徐々に目立たなくなっていきます。DDBの場合は治療に1-2ヵ月の時間を要し、瘢痕などの痕を残すことがあります。Ⅱ度熱傷の後は色素脱出や色素沈着のリスクがあり、改善に時間を要します。

脱毛部位のホクロやシミへの照射

脱毛部位にあるホクロやシミへの照射は照射部分が火傷となることがあります。火傷後はホクロやシミの色が薄くなったり、白く抜けてしまった状態になることや炎症後色素沈着のため濃くなることがあります。

シミにも様々な種類がありますが、老人性色素斑への照射は皮膚に沈着したメラニンと反応し薄くなる可能性がありますが、炎症後色素沈着により照射前より濃くなる可能性もあります。また、肝斑部分への照射は肝斑の悪化の可能性があります。

気になる部分については、シール等での保護や照射を避ける必要があります。

刺青・タトゥー・アートメイクへの照射

照射をすることが出来ません。ジェルを使用した脱毛ではジェル内伝導といいジェル内をレーザーが反射をし、直上の照射でなくても色素が反応をしてしまう可能性があります。また、テープ保護をしていてもテープの種類によってはレーザーが透過してしまったり、強いレーザー光だと透過してしまうことがあるため、マーキングをし直上を避けるだけでなく、テープ保護をしつつマージンを作った上での照射や広めに照射を避ける必要があります。

皮下に注入された色素にレーザー光線が吸収され発熱し火傷となる可能性やレーザーにより色調が変化することや脱色することがあります。傷跡修正アートメイクの場合は、色はスキントーンに合わせた色ですが、レーザーの照射により色が変化してしまうことがあります。

他に過冷却による凍傷、色素脱出、色素沈着、肥厚性瘢痕、ケロイドなどのリスクがあります。

参考論文

1)Mario A Trelles , Fernándo Urdiales, Marwan Al-Zarouni. Hair structures are effectively altered during 810 nm diode laser hair epilation at low fluences. J Dermatolog Treat. 2010 Mar;21(2):97-100