症状から考えられる性感染症
性感染症の代表的な症状
性感染症は性器や性器周辺だけでなく皮膚症状などの全身の症状が出現する場合もあります。また、潜伏期間の違いからタイミングをずらして症状が出現するといった混合感染により多彩な症状を示す場合もあります。
男性、女性共通
性器や性器周辺の痛み(排尿痛、性交時痛、性器、睾丸などの痛み)
性器や性器周辺のかゆみ(性器と陰部周辺、尿道、膣などのかゆみ)
性器やその周辺の腫れ(性器、睾丸、亀頭、太ももの付け根などの腫れ)
女性特有
男性特有
性器や性器周辺の痛み(排尿痛、性交時痛、性器などの痛み)
排尿時痛の原因には、尿道炎、膀胱炎、膣炎などがあります。
男性の尿道炎による排尿時痛ですが、淋菌性尿道炎は激しい痛み、クラミジアは軽度の痛みと一般的にいわれますが淋菌性尿道炎でも症状が軽度のことも少なくなく、男性では20%程度でクラミジア性尿道炎を合併しているといわれています。
可能性のある病名 | 男性 | 女性 |
クラミジア | 軽い排尿時痛 | 軽い排尿時痛、性交時痛 |
淋病 | 激しい排尿時痛、症状が軽いことも多い | 軽い排尿時痛、性交時痛 |
膣トリコモナス症 | 軽い排尿時痛 | 外陰部やその周囲の軽い痛み、軽い排尿時痛 |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 軽い排尿時痛 | 軽い排尿時痛、性交時痛 |
性器ヘルペス症 | 水疱がつぶれて「ただれ」ができ、激しい排尿時痛みがでます、尿道炎単独の場合もあります | |
アデノウイルス性尿道炎 | 激しい排尿時痛が出現します、結膜炎を合併することもあります | |
性器カンジダ症 | 排尿時痛や、性交時痛が出現することがあります | |
一般細菌による尿道炎、細菌性膣症 | 大腸菌などの一般細菌が尿道炎をおこすことで排尿時痛が出現します | 細菌性膣症により排尿時痛や性交時痛をおこします(おりものの匂いがアミン臭という魚が腐ったようなにおいになります) |
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性器や性器周辺のかゆみ(性器と陰部周辺、尿道、膣などのかゆみ)
可能性のある病名 | 男性 | 女性 |
クラミジア | 軽いかゆみや違和感 | 軽いかゆみや違和感 |
淋病 | 尿道のかゆみや熱感があるが強い痛みが優位 | 軽いかゆみや違和感 |
膣トリコモナス症 | 軽いかゆみや違和感 | 外陰部周辺の強いかゆみ(軽いこともある) |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 軽いかゆみや違和感 | 軽いかゆみや違和感 |
性器ヘルペス症 | 痒みや違和感。強い痛みを伴う水疱と水疱が破れた後のただれが出現します。 | |
性器カンジダ症 | 尿道炎や亀頭包皮炎によるかゆみ | 陰部のかゆみやときに灼熱感が出現します |
一般細菌による尿道炎・亀頭包皮炎、細菌性膣症 | 尿道炎や亀頭包皮炎によるかゆみ | 細菌性膣症によるかゆみ |
毛じらみ | 痒陰毛周辺部分のかゆみが出現します。 |
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性器やその周辺の腫れ
可能性のある病名 | 男性 | 女性 |
クラミジア | 精巣上体炎のため陰嚢が腫れることがある | |
淋病 | 精巣上体炎のため陰嚢が腫れることがある | |
膣トリコモナス症 | 膣入口部が腫れることがある | |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 精巣上体炎のため陰嚢が腫れることがある | |
性器ヘルペス症 | 初回感染で鼠径部のリンパ節(ふとももの付け根)の腫脹と圧痛が出現する | |
性器カンジダ症 | 亀頭包皮炎による亀頭部の腫れ | 外陰部の腫れ・かゆみ |
一般細菌による尿道炎・亀頭包皮炎、細菌性膣炎 | 亀頭包皮炎による亀頭部の腫れ | 細菌性膣炎による腫れ・かゆみ |
梅毒 | 1期の症状として鼠径部リンパ節(ふとももの付け根)が無痛性で固く腫れることがあります |
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性器や肛門周囲のいぼ、ぶつぶつ
可能性のある病名 | 症状 |
尖圭コンジローマ | 性器や肛門周辺の皮膚、粘膜や口腔内の粘膜にトサカ状の痛みやかゆみのないいぼが出現します |
性器ヘルペス症 | 性器や性器周辺、肛門周辺に激しい痛みを伴う水膨れ(赤いぶつぶつ)や水膨れがつぶれたただれが出現します |
梅毒 | 感染後3週間位で感染した部位に初期硬結といわれる無痛性のにきびのようなしこりができます。しこりが破れて硬性下疳といわれる無痛性の潰瘍のようなただれが出現します。 感染から3か月後ぐらいで全身に膿を含んだ白~黄色のいぼのような発疹が出現します(膿疱性梅毒) |
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のど(咽頭)や唇周囲の痛み、違和感、できもの
可能性のある病名 | 症状 |
クラミジア | 咽頭感染で喉の腫れ、痛み、違和感などが出現することがあります |
淋病 | 咽頭感染で喉の腫れ、痛み、違和感などが出現することがあります |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | クラミジアに似た症状が出現します |
性器ヘルペス症 | 初回感染で咽頭感染を起こすと喉の痛みや嚥下時痛、発熱、口腔内アフタ、扁桃の腫れなどが出現します。再発時はのどの痛みなどで初回感染時より症状は軽いです。 |
尖圭コンジローマ | 性器や肛門周辺だけでなく口腔内、咽頭にも感染することがあり、痛みやかゆみのないいぼが出現します |
梅毒 | 感染から3週間ぐらいで感染した部位に初期硬結といわれる無痛性のにきびのようなしこりができ、しこりが破れて硬性下疳といわれる無痛性の潰瘍のようなただれが出現します。 |
HIV/AIDS | 感染後2~4週間後に発熱、咽頭通、倦怠感、筋肉痛などインフルエンザに似た症状が初期症状として出現することがあります。 |
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発熱、頭痛、筋肉痛などの全身症状
可能性のある病名 | 症状 |
HIV/AIDS | 発熱、咽頭痛、倦怠感、筋肉痛などインフルエンザに似た症状が感染後2~4週間の間に初期症状として出現する場合があります |
A型肝炎 | 急性肝炎として倦怠感、食欲不振、黄疸、発熱、筋肉などの症状が出現することがあります |
B型肝炎 | 急性肝炎として倦怠感、食欲不振、黄疸、発熱、筋肉などの症状が出現することがあります |
C型肝炎 | 急性肝炎を起こすことは20~30%程ですが、倦怠感、食欲不振、黄疸、発熱、筋肉などの症状が出現することがあります |
クラミジア | 咽頭への感染を起こすと無症状のことが多く、喉の腫れや痛み、発熱などが出現することがあります。男性での精巣上体炎や女性での骨盤腹膜炎(強い腹痛、発熱を伴う)で全身症状が出現する場合もあります。 |
淋病 | 咽頭への感染を起こすと無症状のことが多く、喉の腫れや痛み、発熱などが出現することがあります。男性での精巣上体炎や女性での骨盤腹膜炎(強い腹痛、発熱を伴う)で全身症状が出現する場合や、稀に血液中に菌が侵入し、関節炎や心内膜炎、髄膜炎などの症状を起こすことがあります。 |
梅毒 | 2期(3か月~)で発熱、関節痛などの風邪のような症状が出現します |
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おりものの異常(におい、色調、量)
性器カンジダ症、腟トリコモナス症、細菌性腟症がおりものの異常を主症状とする主な性感染症になりますが、クラミジアや淋菌など他の性感染症でも性状が変化することがあります。
可能性のある病名 | 症状 |
クラミジア | 症状が無いことが多いですが、おりものの量が増える、黄白色~黄緑色と色調が変化することがあります。子宮頚管炎のため血液まじりの茶色味がかった色調になることもあります。 |
淋病(淋菌) | 症状が無いことが多いですが、おりものの量が増える、黄白色~黄緑色と色調が変化することがあります。子宮頚管炎のため血液まじりの茶色味がかった色調になることもあります。 |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | クラミジアと同様の症状を認めることがあります。 |
膣トリコモナス症 | 悪臭(アミン臭)を伴う、黄緑色や血液まじりの茶色味がかった色調で泡沫状のおりものが大量に出現します。臭いは軽いこともあります |
性器カンジダ症 | 白色のヨーグルト状、粥状のおりものが出現します。性器カンジダ症のみの場合はアミン臭はありません |
細菌性膣症(一般細菌) | 灰白色で悪臭(アミン臭)をともなうおりもので、量はそこまで増加しないことが多いです |
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尿道からの膿
尿道からの膿は尿道炎により症状が出現します。男性では膿が尿道から排出されるのを気づいたり、下着に膿によるシミができているで気づきます。
女性は男性と比べて尿道が短いため尿道だけの感染がほぼなく、膀胱炎を同時に発症します。尿道炎単独では無症状のことが多いため診断されることはほぼなく、分泌物がみられることもあまりありません。
尿道炎の原因としてはクラミジア、淋病が多いです。クラミジア・淋病以外の尿道炎を非クラミジア非淋菌性尿道炎といいます。膿の性状は淋病の場合は黄~緑色でドロドロとした性状で淋病以外の場合は白色~透明で薄いものであることが多いですが、淋菌性尿道炎でも症状が軽い場合はクラミジアとの区別が難しいため、検査が必要となります。
可能性のある病名 | 症状 |
クラミジア | 漿液性(さらさらとしている)や粘液性(ねばねばしている)の透明~乳白色の膿が出ます |
淋病(淋菌) | 黄色や緑色のドロドロとした濃い膿が多量に出ます、症状が軽い場合はクラミジアとの区別が難しい場合があります |
非クラミジア非淋菌性尿道炎は下記になります | |
マイコプラズマ・ウレアプラズマ | クラミジアに似た症状となります |
膣トリコモナス症 | 無症状が多いですが、軽いかゆみや排尿時痛、膿が少量出ることがあります |
性器カンジダ症 | 漿液性(さらさらとしている)の透明~乳白色、灰白色の膿が出ます |
大腸菌など | 大腸菌などによる尿道炎のため少量の膿が出ます |
アデノウイルス性尿道炎 | 咽頭キャリアからのオーラルセックスで感染します。激しい排尿痛があり、尿道分泌物は透明~灰白色。10日程で自然に治癒します |
単純ヘルペスウイルス性尿道炎 | 激しい排尿痛を認め、尿道分泌物は透明~灰白色。 |
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亀頭包皮炎
亀頭や包皮のかゆみ、痛み、赤み、ただれなどの症状が出現します。性病以外でも発症し、発症する年齢・原因は多岐にわたります。多くは亀頭と包皮の間のカス(恥垢)が貯まり、カスに細菌や真菌が増殖をし感染を起こします。洗いすぎや摩擦などで小さな傷がつき、そこから感染を起こすこともあります。包茎があると包皮内でカスが貯まりやすくなり、尿で湿り原因菌が繁殖しやすい環境となり亀頭包皮炎になりやすいといわれています。
糖尿病がある場合は糖を含んだ尿が亀頭やその周囲に付着して原因菌が増殖しやすくなります。糖尿病の治療やダイエット目的でのSGLT-2阻害薬(フォシーガやカナグルなど)を服用していると発症しやすくなるといわれています。
強くごしごしと洗うことで洗いすぎによる刺激によって炎症が悪化してしまう可能性がありやさしく洗うことが大事になります。
原因と特徴
細菌性亀頭包皮炎
大腸菌やブドウ球菌などの一般細菌が主な原因となります。亀頭や包皮が赤く晴れ、黄色の膿が出てきます。亀頭包皮炎の90%が細菌性といわれています。淋菌やクラミジアといった細菌が原因となることがあるため、心当たりのある場合は検査を行う必要があります。オーラルセックス(フェラチオなど)により咽頭の溶連菌が感染を起こす原因となる場合もあります。
カンジダ性亀頭包皮炎
カンジダは常在菌のためストレスや免疫が落ちた際の自己感染やパートナーからの感染で発症する場合があります。亀頭のかさつきやかゆみ、ただれなどが出現し、白色のカスがでてきます。炎症が慢性化することで、包皮が縦切れすることがあります。
細菌とカンジダの混合感染をおこすこともあります。
性感染症が疑われる場合は性病の核酸検出検査を行います。また、皮膚や粘膜から検体をとり、培養検査を行い原因菌を特定する検査を行います。抗真菌薬は細菌性カンジダには全く効果はないため、原因がはっきりとしない状態での治療を行うと症状が長引き、悪化する可能性があります。
一般細菌が原因の亀頭包皮炎であれば抗生剤の外用(ゲンタマイシン軟膏など)や内服での治療を行います。カンジダが原因の際は抗真菌薬の外用や内服を行います。性病が原因の場合は性病に準じた治療を行います。