唾液腺へのボツリヌストキシン注射
唾液腺ボツリヌストキシン(唾液腺ボトックス、耳下腺ボトックス、顎下腺ボトックス)
唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺があります。唾液腺の神経伝達物質は神経筋接合部と同じくアセチルコリンのため、ボツリヌストキシンの注入により耳下腺および顎下腺の唾液分泌抑制および唾液腺の萎縮効果が期待できます。唾液腺へのボツリヌストキシン注射では耳下腺、顎下腺への注入を行います。舌下腺は元々他の唾液腺よりも小さく口腔底の粘膜直下で下顎骨の内面に位置し、体表からは深い位置にあるためボツリヌストキシンの注入は周囲の舌を動かす筋肉や嚥下に関する筋肉への影響も起こりうる部位になるため避けることが多い部位です。また舌下腺が腫れたように目立つ場合は「顎下型ガマ腫」の可能性があるため、歯科もしくは口腔外科での検査や治療が必要となる場合があります。
唾液腺の分泌は安静時で顎下腺が70%、耳下腺が25%、舌下腺が5%といわれ、酸刺激時は耳下腺の分泌量が増えます。ボツリヌストキシン注射時、特に「顎下腺」への注入により唾液の分泌量が減るとドライマウスとそれに伴う口臭や虫歯の原因となることがあります。
唾液腺肥大の原因には先天的なもの以外にアルコール依存、HIV関連唾液腺疾患、摂食障害(過食症、神経性食思不振症など)、パーキンソン病、ALSなどがあるといわれています。
耳下腺ボトックス
小顔効果のあるボトックスというとエラボトックスが有名ですが、顔が大きく見える原因が咬筋ではなく耳下腺肥大の場合は耳下腺へのボツリヌストキシンの注入が効果的となります。耳下腺は奥歯を噛みしめても咬筋と異なり大きさは変わらず、位置は咬筋より耳側にありまっす。耳下腺へのボツリヌストキシン注射のみでは唾液分泌を抑制する効果は弱いため、ドライマウスなどの副作用は生じにくいといわれています。
顎下腺ボトックス
顎下腺は下顎の下に左右対称に存在し、顎下腺の肥大により顎下のもたつきを生じることがあります。脂肪吸引後でも顎下のもたつきが気になるときは吸引でとることのできない広頚筋下の脂肪の可能性もありますが、唾液腺が原因のこともあります。皮下脂肪により顎下のもたつきがある場合は脂肪溶解注射や脂肪吸引が必要となる場合があります。顎下腺は唾液の70%を分泌しているため、ボトックスで分泌を抑制すると口腔内の乾燥とそれに伴う症状が生じるリスクがあります。また、顎下腺周囲には舌骨上筋群があり、顎下腺外への注入により周囲の筋肉に作用してしまうと飲み込み難さなどの症状が出現することがあります。