リジュラン・プルリアルデンシファイ
リジュランやプルリアルデンシファイとは?
リジュランやプルリアルデンシファイはよく耳にする製剤と思います。両製剤ともポリヌクレオチド(PolyNucleotide、PN)製剤といわれる製剤の1種で、サーモンやマスなどの精巣由来の核酸(DNA断片)を高純度で抽出・精製したポリヌクレオチドを主成分とした、皮膚の再生を目的として注入するエイジングケア治療となります。近年では、肌の修復を目指すアプローチとして注目されており、多くの美容皮膚科で導入されるようになりました。
ポリヌクレオチド製剤の中でも代表的な製品が、韓国製のリジュランシリーズの「リジュラン」とルクセンブルク製のプルリアルシリーズの「プルリアルデンシファイ」なります。他の製剤としては、リジュランの特許期間満了により開発された製剤(後発薬)に、リズネやリジュバンなどがあります。
この2製剤は類似点も多い一方で、成分や目的に違いがありますが、最近ではプルリアルデンシファイを導入するクリニックが増えてきています。
ポリヌクレオチドの作用機序
ポリヌクレオチドは、サーモンの精巣由来のDNA断片を分解・精製した高分子核酸のことをいいます(リズネではマス由来になります)。似ていますがECM製剤とは別のカテゴリーに分類されます。
ポリヌクレオチドの作用機序
ポリヌクレオチドはアデノシンA2A受容体に作用することで、皮膚で様々な生理活性が起こります。
🔹抗炎症作用
アデノシンA2A受容体は免疫細胞(マクロファージ・好中球・T細胞など)に発現しており、サイトカイン放出を抑制する効果があります。TNF-α、IL-6、IL-1β(炎症性インターロイキン)などが抑制されることで肌の慢性炎症を抑え、赤みの改善や肌の損傷を抑える効果が期待されます。
🔹血管内皮成長因子の発現
アデノシンA2A受容体が活性化することで、線維芽細胞やマクロファージ、血管内皮細胞から血管内皮成長因子が発現され、毛細血管の形成(血管新生)を促進することで組織への血流を促し、創傷治癒の改善効果が期待されます。
🔹創傷治癒促進
アデノシンA2A受容体には線維芽細胞を活性化させる作用、表皮基底層の細胞増殖や遊走を促進する作用、角化を調整する作用があります。これらの作用により創傷治癒を促進する効果が期待できます。
肌へポリヌクレオチド製剤を注入することで、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生成促進によるECMの修復効果や肌のターンオーバーを整える効果によって、毛穴や小じわの改善効果や肌のハリや質感、うるおいの改善効果が期待されます。
期待できる効果
期待できる効果 | 効果の内容 |
---|---|
肌の潤いやハリ・ツヤの改善 | 水分保持力アップと真皮再生(線維芽細胞活性化によるECMの修復) ※非架橋ヒアルロン酸を含むプルリアルデンシファイでより効果を発揮します |
小じわやたるみ、毛穴を目立ちにくくする | 線維芽細胞活性化による、真皮のコラーゲンやエラスチンの生成促進 |
傷跡を目立ちにくくする(ニキビ跡や妊娠線など) | 線維芽細胞活性化による、真皮のコラーゲンやエラスチンの生成促進 |
肌の赤みや色むらの改善 | 抗炎症作用による肌の慢性的な赤みの改善 |
色素沈着の改善 | ターンオーバーの正常化と抗炎症作用による改善 |
リジュランシリーズとリズネ
リジュランは韓国のPharmaReserch社が製造しているPN製剤です。リジュランにはリジュラン(ヒーラー)、リジュランi、リジュランHB、リジュランSの製剤があり、一般的にリジュランといわれている製剤はリジュランヒーラーのことをいいます。
リジュラン(ヒーラー)
PN濃度2%で粘度がやや高いため、注入時の痛みが他のPN製剤と比べて強いのが特徴となります。顔全体のリジュビネーションを目的とした製剤になります。
リジュランi
目元の治療に適し、PN濃度2%と通常のリジュランと同じですが、粘度が低いため皮膚が薄い部位への注入に適した製剤で、目尻や目の周りの小じわの弾力性改善を目的とした製剤になります。
リジュランHB
非架橋型ヒアルロン酸と麻酔薬のリドカインを配合し施術時の痛みが軽減されています。PN濃度は1%と他のリジュランと比べて低いですが、非架橋ヒアルロン酸による保湿効果とPNとの相乗効果が期待される製剤となります。製剤コンセプトとしてはプルリアルデンシファイと近い製剤となりますが、マンニトールは含まれていません。
リジュランS
PN濃度は2%と通常のリジュランと同じですが、リジュランシリーズの中で最も粘度が高く硬い製剤になり、注入後も注入部位に長くとどまることで高い効果が期待されます。ニキビ跡や水疱瘡の跡のへこみなどの肌の凹凸への注入に適した製剤となります。
リズネ
リズネはリジュランの特許権満了に伴い後発品として発売された製品です。リジュランがサーモン(鮭)から抽出されているのに対し、リズネはマス(鱒)から抽出をしています。pHの調整および粘度がリジュランより低いため、痛みが軽減された製剤になります。リズネはリジュランのように複数製品のラインナップはありません。
プルリアルシリーズ(PN製剤を含む製品)
プルリアルシリーズはルクセンブルクのMD Skin Solutions社が製造している製品になります。プルリアルシリーズにはフィラー(ブースター、クラシック、ボリューム)、架橋剤を含む肌育注射のヒアルロン酸(プルリアルバイオスカルプチャー)など様々な製品がありますが、PN製剤は「プルリアルシルク」、「プルリアルデンシファイ」、「プルリアルヘアデンシファイ」の3製剤になります。
プルリアルデンシファイ
PNを1%(10mg/ml)、非架橋ヒアルロン酸を2%(20mg/ml)、マンニトール40mg/mlが主成分となります。非架橋ヒアルロン酸は肌のうるおいや弾力性において即効性のある改善効果が期待できます。マンニトールはヒアルロン酸の分解抑制効果が期待され、効果を持続させる効果や、痛みの軽減効果などがあります。PN濃度はリジュランと同じですが、非架橋ヒアルロン酸とマンニトールを含むため、即効性や保水性の面でより効果が実感しやすい製品となります。
プルリアルシルク
PNを0.75%(7.5㎎/ml)を含む製剤で「プルリアルシリーズですが非架橋ヒアルロン酸は含まない製剤」となります。目回りなどの皮膚の薄い部位に適した製剤となります。
プルリアルヘアデンシティ
PNを0.75%(7.5㎎/ml)を含む製剤で「プルリアルシリーズですが非架橋ヒアルロン酸は含まない製剤」となります。脱毛症に対して注入することでポリヌクレオチドが毛根組織を修復することで抜け毛を減少し発毛・育毛を促す効果が期待できます。
リジュラン(ヒーラー)とプルリアルデンシファイの違い
リジュラン(ヒーラー)は高濃度のポリヌクレオチドを含むため、「肌の再生力」を高めたい方におすすめの製剤となります。プルリアルデンシファイは、ポリヌクレオチドに非架橋ヒアルロン酸を加えた製剤のため、肌の再生力を高めつつ、ハリや保湿感といったうるおいも欲しい方におすすめです。
項目 | リジュラン(ヒーラー) | プルリアルデンシファイ |
---|---|---|
製造国 | 韓国(Pharmaresearch社) | ルクセンブルク(MD Skin Solutions社) |
主成分 | ポリヌクレオチド(PN) | PN + 非架橋ヒアルロン酸+マンニトール |
特徴 | PNによる抗炎症、創傷治癒促進効果が期待 | PNによる効果に加え、ヒアルロン酸による水分保持効果が期待 |
効果の特徴 | 再生・修復・抗炎症作用に優れる | ハリ+水分保持+軽度なボリューム補充効果 |
注入間隔・回数 | 2〜3週間ごとに3回の施術、その後は半年〜1年ごとにメンテナンス | 3~4週間ごとに3回の施術、その後は3カ月ごとにメンテナンス |
副作用・注意点
- 注入後に赤みや軽度な腫れ(通常1~3日ほど)、内出血(1~2週間ほど)が出ることがありますが、自然に改善します。
- リジュラン・プルリアルデンシファイの有効成分であるポリヌクレオチド(PN)は、サーモンから抽出した成分のため、魚や魚卵アレルギーがある方は施術をお控えください。
- 注射後の洗顔は当日から可能ですがこすらないように注意が必要です。スキンケアやメイクは翌日から可能です。
- 飲酒、激しい運動、サウナ、入浴等は腫れや内出血が悪化するリスクがあるため、1週間程お控えください。
- 妊娠中・授乳中の方 、抗凝固薬を服用中(血が止まりにくいため)、免疫抑制剤を服用中(感染のリスクが高まるため)、ケロイド体質の方は施術は行うことができません。
- 治療部位に皮膚疾患や感染症のある方は症状が悪化するリスクや感染が他の部位に広がってしまう可能性があるため、施術を行うことができません。