ニキビ治療(自費)
保険治療でニキビが治らない場合や、副作用で継続できない場合などで自費での治療を行っていきます。自費治療(美容皮膚治療)は保険治療とは異なり高額となるため、効果だけでなく費用面も考えて治療を組み立てていく必要があります。
ニキビの美容皮膚治療は大きく以下の通りのものがあります。
美容皮膚でのニキビ治療
日本では未承認ですが海外では承認を受けている外用薬による治療
ピルやスピロノラクトンの内服(女性のホルモン変動によるニキビ)による治療
薬剤を使用したケミカルピーリングにより異常角化のコントロールをする治療
皮脂の分泌を減らす治療(「イソトレチノイン」内服、「ニードルRF」、「光線力学治療」、「レーザー」などの機械施術)
アクネ菌の殺菌をする治療(「IPL」や「レーザー」などの機械施術)
肌質や金額に応じて治療法をオーダーメイドで組み立てていくことができますが、保険診療と異なり費用が高くなるため、施術を検討する際は効果も大事ですが費用についてもクリニックとしっかり相談をする必要があります。
未承認医薬品の外用薬
2024年に米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology: AAD)から最新のニキビ治療ガイドライン(Guidelines of care for the management of acne vulgaris)が発表され、条件付きで推奨される治療にアゼライン酸とクラスコテロンクリーム、他の外用レチノイドがあります。
アゼライン酸の外用
国内で入手可能な製品は20%アゼライン酸の外用があります。アゼライン酸は日本では医薬品としての承認はないため、「化粧品」の成分として流通されています。ロートから20%濃度の「AZAクリア」というクリニック限定化粧品が販売されています。角化異常の改善効果、抗菌効果、抗炎症効果、メラニン合成を抑制する効果があるといわれています。使用によりピリピリとした刺激感を感じることがありますが、1~2週間程で慣れるといわれています。
米国のガイドラインでの使用の推奨
軽度から中等度の炎症性ニキビ(赤・黄ニキビ)
アダパレンや過酸化ベンゾイルの外用薬で副作用が出やすい敏感肌
色素沈着(PIH)が気になる方(特に色素沈着が残りやすい有色人種)
妊娠中・授乳中
他の治療法と併用する場合
•過酸化ベンゾイル、アダパレン、抗生物質などとの併用でより効果的
• 抗炎症作用があるため、レチノイドと併用して副作用(赤み・乾燥)を軽減する効果
欠点としては効果が現れるまでに数週間~数か月の継続的な使用が必要となります。
短期間での効果を期待する場合は抗菌薬外用の方か効果が期待できます。
重症のニキビ(膿腫、硬結)では推奨されず、他の治療との併用が必要となります。
クラスコテロンクリーム
クラスコトロンは、抗アンドロゲン作用を持つ外用薬であり、特にホルモンの影響を受けやすい思春期以降のニキビ患者に対して有効とされます。日本国内では自費診療でも取り扱いのあるクリニックはクラスコトロンは、抗アンドロゲン作用を持つ外用薬であり、特にホルモンの影響を受けやすい思春期以降のニキビ患者に対して有効とされます。日本国内では自費診療でも取り扱いのあるクリニックはありませんでした(2025年3月時点、google上での検索より)。
米国のガイドラインでの使用の推奨
軽度から中等度の炎症性ニキビ(赤・黄ニキビ)
他の外用療法が十分な効果を示さない場合
過酸化ベンゾイル、アダパレン、外用抗菌薬で十分な効果が得られなかった場合の追加治療として考慮されます
抗生物質の使用を避けたい場合
ホルモン性ニキビの可能性がある場合
- 女性でのホルモン変動によるニキビ(生理前の悪化など)がみられる場合に有効
- 経口避妊薬やスピロノラクトンを使用できない場合の代替としても考慮
他の外用薬と併用する場合
- クラスコトロンは過酸化ベンゾイルやアダパレンなどと併用することで相乗効果を発揮する。
重症ニキビ(結節性・嚢胞性)には、経口療法(イソトレチノインや抗生物質)の方が推奨される。
他の外用レチノイド
米国ではトレチノイン、アダパレン、タザロテン、トリファロテンという4種類のレチノイドを使うことができますが、日本ではアダパレンのみが保険適用の薬剤のため、トレチノインなど他の薬剤を使用する場合は自費での治療となり費用が高額となります。
スピロノラクトン、ピルの内服
どちらの薬剤も女性のホルモン変動によるニキビに使用される薬剤となります。日本国内ではスピロノラクトンは利尿剤として承認をされていますが、ニキビ治療やFAGA治療では適応外治療となります。ピルは「月経困難症」の病名で日本国内で承認をされていますが、避妊目的やニキビ治療では適応外治療となります。
スピロノラクトン
米国皮膚科学会(AAD)のガイドラインでは女性のニキビ治療に条件付きで推奨をされた薬剤になりますが、日本のガイドライン上では浮腫や女性化乳房、月経不順などの副作用があることに加えて保険適用外であることから「炎症性皮疹あるいは面皰のいずれを主体とする痤瘡にも、スピロノラクトン内服を推奨しない。」となっています。
米国皮膚科学会のガイドラインでの扱い
スピロノラクトンは、抗アンドロゲン作用を持つ利尿薬であり、成人女性の尋常性ざ瘡(ニキビ)治療に使用されることがあります。アンドロゲンは皮脂の分泌を促進する働きがあり、スピロノラクトンはこの作用を抑えることで治療効果を発揮します。特に、ホルモンの影響が大きい女性で他の治療法が無効な場合に適応となることが多いです。
男性においてアンドロゲン抑制による副作用(女性化乳房、性機能障害など)が強く出る可能性があるため、推奨されていません。
内服量は一般的に50~200mg/日で、効果が現れるまでに数週間から数か月を要します。治療期間中は血清カリウム値のモニタリングが必要となり、特に腎機能が低下している場合は注意が必要です。スピロノラクトンの副作用として、多尿、低血圧、月経不順、乳房圧痛などが報告されています。
妊娠中の使用は禁忌とされており、妊娠可能な女性には避妊が推奨されています。
重度のホルモン性ニキビにおいては、ピルとの併用により効果が高まる可能性があるといわれています。
スピロノラクトンが条件付き推奨の理由
- 有効性はあるが、適用が限定的
- スピロノラクトンは成人女性のホルモン性ニキビに有効とされていますが、男性には推奨されていません。男性においてアンドロゲン抑制による副作用(女性化乳房、性機能障害など)が強く出る可能性があるからです。
- 副作用のリスク
- 高カリウム血症のリスクがあるため、特に腎機能が低下している患者では注意が必要となります。その他の副作用として、月経不順、乳房圧痛、低血圧、頻尿などがあります。
- 妊娠への影響
- 胎児の生殖器発達に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中の使用は禁忌となります。妊娠可能な女性には避妊が推奨されます。
- 長期使用の安全性
- 長期的な安全性データが限定的であるため慎重な使用が求められます。
ピル(経口避妊薬)
ピル(経口避妊薬)は、エストロゲンとプロゲスチンの合剤であり、ホルモンバランスを調整することでニキビの治療に用いられます。特に、ホルモンの影響を受けやすい女性のニキビ治療に有効とされており、米国皮膚科学会(AAD)のガイドラインでは条件付きで推奨されています。日本のガイドライン上では、「他の治療で改善が不十分で、結果的に避妊につながることを容認する成人女性の痤瘡に、経口避
妊薬(いわゆるピル)あるいは低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬を使用してもよいが、推奨はしない。」という扱いになっています。理由としては、保険適用外の治療法であること、血栓形成や不正性器出血などの副作用があるからになります。
ピルの服用はピル中のエストロゲンによってSHBG(性ホルモン結合グロブリン)という物質が増加します。SHBGはテストステロン(アンドロゲンの1種)と結合と結合し、テストステロンはSHBGと結合すると男性ホルモンとしての作用が発揮できなくなります。
また、下垂体に作用することで、LH、FSHが抑制され、副腎や卵巣から分泌されるテストステロンの分泌も抑制されます。これらの働きによってニキビ治療に有効だといわれています。ピルにはニキビ抑制の働きだけでなく避妊作用があることについて理解し、浮腫や体重増加、血栓症などのリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
米国皮膚科学会のガイドラインでの扱い
体内のアンドロゲン(特にテストステロン)は皮脂腺を刺激し、皮脂の過剰分泌を引き起こしますが、ピルは皮脂分泌を抑えることでニキビを出来にくくする効果が期待されます。特に、月経周期と関連したニキビ(ホルモン性ニキビ)に対して高い効果があるとされています。
一方で、副作用も存在し、吐き気、乳房の張り、頭痛、気分の変化、血栓症のリスク上昇などがあります。特に喫煙者や肥満、既往歴に血栓症のリスクがある女性(血栓性素因があるため)では、注意が必要である(日本での添付文章上、喫煙・血栓性素因は禁忌となります。)
ピルの効果は使用を中止すると減弱してしまいます。治療の開始には医師の指導が必要であり、特に他のホルモン療法やスピロノラクトンとの併用を検討する場合には、患者の健康状態やリスク要因を十分に評価することが重要となります。
ピル(経口避妊薬)が条件付き推奨の理由
- 有効性は認められているが、全員に適用できるわけではない
- ホルモン性ニキビの治療に有効であるが全ての女性に適しているわけではありません。
- 副作用のリスク
- 血栓症のリスク上昇(特に喫煙者、高血圧、肥満の女性)
- その他の副作用として、吐き気、乳房の張り、頭痛、気分の変化などがあります。
- 効果が一時的
- 服用を中止するとニキビが再発する可能性が高いです。
- 禁忌や制約がある
- 35歳以上の喫煙者は血栓症リスクが高いため推奨されません。
- 特定の疾患(エストロゲン依存性悪性腫瘍「乳がんや子宮内膜癌など」、血栓症の既往、肝腫瘍など)を持つ患者には不適。
ケミカルピーリング
日本のガイドライン上ではサリチル酸マクロゴールやグリコール酸を使用したケミカルピーリングは、保険適用外であることを考慮し、標準治療が無効あるいは実施できない場合に選択肢の一つとして推奨されています。
ピーリング剤によって角質を剥離し異常角化の状態の改善効果により毛穴が詰まりにくくなり、ニキビが出来にくくなる効果が期待できます。ピーリングは2-4週間毎に定期的に繰り返し治療をしていく必要があります。ピーリング時はヒリヒリ感や赤みがでることがあります。また、ピーリング後は皮むけや乾燥などが強くなることがあるので保湿や紫外線対策をしっかりと行う必要があります。
ケミカルピーリングのまとめは別記事をご覧ください。
皮脂の分泌を減らす治療
イソトレチノイン内服
アメリカでのガイドラインでは、重症のニキビでの治療の第一選択として「イソトレチノインの内服」があります。
保険治療やケミカルピーリングなどの効果が乏しい場合に検討する治療法になり、イソトレチノインは海外では使用実績も多く効果の高い治療になります。
イソトレチノインの内服は皮膚の角化異常の改善効果、皮脂腺の退縮効果、抗炎症効果があります。重症ニキビや難治性であっても高い有効性と低い再発率を認めますが副作用や注意事項が多く、日本では未承認医薬品になります。
特に、催奇形性があるため妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方は服用禁忌となります。
米国皮膚科学会のガイドラインでの扱い
イソトレチノインは、重度の尋常性ざ瘡(ニキビ)に対して最も効果的な経口レチノイドで、ビタミンA(レチノール)の誘導体として分類されます。皮脂腺の退縮作用、角化調節作用、抗炎症作用を持ち、皮脂分泌が減ることによりアクネ菌の増殖も抑えられ、他の治療法では改善が難しい難治性のニキビにも高い効果を発揮します。イソトレチノインは、抗菌薬治療とは異なり、「皮脂腺の退縮」によりニキビの根本原因にアプローチするため、治療後の長期的な再発予防の効果が期待できます。
内服スケジュール
- 初期投与量:0.5 mg/kg/日(40kgの人なら1日20mg)。副作用が強い場合、さらに低用量(0.2~0.3 mg/kg/日)で開始します。
- 維持投与量:通常1.0 mg/kg/日を目安にします(40kg の人なら1日40mg、50㎏の人なら1日50㎎)
- 目標投与量:120~150㎎/kg
- 投与期間:平均で16~24週間(4~6か月)
- 食事との関係:脂溶性のため、食事と一緒に食べると吸収率が上がります。
追加投与と再発時対応
- 総投与量120~150 mg/kgに達しない場合や、治療後6ヶ月以内に症状が再発した場合、2クール目の内服が検討されます。
- イソトレチノインの1クール目(通常16~24週間)が終了した後、2クール目を開始するまでに2か月の休薬期間が必要です。
有効性
- 治療終了後に約85%でニキビの大幅な改善または完全寛解するといわれています。
- 30~40%で1クールの内服で完全に治癒するといわれています。
- 再発率は約20~30%であり、その場合は2回目の治療コースを行うこともあります。
副作用とリスク
皮膚・粘膜の乾燥
最も一般的な副作用で、皮膚(50~80%)・唇(90%以上)・目(20~50%)の乾燥が生じ、鼻や喉が乾燥することもあります。保湿剤・リップクリーム・人工涙液(点眼薬)の使用が推奨されています。
一時的な症状悪化(イソトレチノインフレア)
治療開始後の最初の数週間に、ニキビが一時的に悪化することがあり、通常は数週間以内に落ち着きます。
精神的副作用
抑うつ・不安・希死念慮のリスクが指摘されています。これらの症状が出た場合は、すぐに医師に相談する必要があります。
肝機能障害・脂質異常
血中脂質(LDL・トリグリセリド)が上昇することや肝機能障害、まれに貧血を引き起こす可能性があるため、1~2か月毎の定期的な血液検査が必要です。
催奇形性
妊娠中の服用は厳禁(重篤な先天異常を引き起こす可能性がある)で、内服開始の1か月以上前からの避妊が必要となります。治療終了後1か月間は避妊をする必要があります。治療開始前、治療中1か月毎、終了後1か月間の定期的な妊娠反応検査が必要です。避妊方法も経口避妊薬とバリア法(コンドームの使用)と2種類以上の避妊法が推奨されています。
稀な副作用としてはアナフィラキシーショック、スティーブンス・ジョンソン症候群、視力低下、急性膵炎、急性肝炎などがあるといわれています。
イソトレチノインは骨端線の閉鎖を促すため、12歳未満での内服はできません。
ニードルRF
ニードルRF(ポテンツァ、シルファーム、アグネスなど)という機器を用いた皮脂腺電気凝固治療という方法があり、ニキビ1か所ずつに針を使用し皮脂腺を破壊していく方法と、フラクショナルニードルを使用し肌に満遍なく行う方法があります。
1カ所ずつ針を刺し皮脂腺を破壊する治療(ポテンツァ・ワンニードルやアグネスなど)は同じ毛穴から何度もニキビができる場合に効果的です。針を毛穴に刺し、電流をながすことで皮脂腺を凝固し破壊します。皮膚に接する針の部分は絶縁されているため皮膚表面には熱が伝わらず皮膚表面のダメージは与えにくくなっています。壊れた皮脂腺は元には戻らないため皮脂腺を壊した部分でのニキビの再発は起きにくくなる効果が期待できます。
フラクショナルニードルでの治療方法は肌全体的に施術を行っていくものになるため、マイルドに全体的な皮脂腺を減らしていく施術になります。
光線力学治療
アミノレブリン酸というアミノ酸を内服すると3~4時間程経過すると皮脂腺に取り込まれ、ポルフィリンという物質が生成されます。ポルフィリンは光感受性物質といわれ、光と光化学反応をおこし、一重項酸素(活性酸素の1種)が生成されます。ポルフィリンの吸収率はソーレー帯といわれる400-500nm前後とQ帯といわれる500-700nm前後で高くなります。400-450nm前後では青色灯を使用し、500-700nmでは橙色灯を使用します。500-700nmの方が皮膚深達度は高くなるため、皮脂腺への効果は高いといわれています。
これらの光を照射することでポルフィリンから発生した一重項酸素によりアクネ菌の殺菌と皮脂腺の破壊によりニキビを改善させる治療になります。アミノレブリン酸の内服後24時間は光に敏感な状態となるため、アミノレブリン酸内服当日、翌日は強い光に当たらないように注意をする必要があります。
1か月に1度のペースで回数を重ねていくことで効果を高め複数回の治療が必要となります。治療後は数日から1週間一時的に赤みが出たり、ニキビが出来やすくなることがあります。色素沈着を起こすことがありますが数か月かけて徐々に色見は落ち着いてきます。
レーザー治療
1319nmの波長のレーザーを使用します(アドバテックスレーザー)。レーザーを照射すると水に吸収され皮膚深部でバルクヒーティング(皮膚深部での熱だまりの形成)により皮脂分泌を抑制させる治療となります。
アクネ菌を殺菌する治療
アクネ菌が産生するポルフィリンに反応する波長の光を照射することで、一重項酸素(活性酸素)を発生させ、ポルフィリンが分布する周囲のアクネ菌を殺菌する治療となります。
IPL
ニキビの原因となるアクネ菌はポルフィリンを代謝物として産生します。肌診断機でのUV光で撮影するとポツポツと光った点が見えると思いますが、肌診断機を使用することで客観的にポルフィリンの状態を観察することができます。このポルフィリンはIPLに含まれる420nmの光が照射されると、ポルフィリンに吸収され一重項酸素(活性酸素)を発生させます。この一重項酸素はアクネ菌の殺菌効果があります。590~620mmのフィルターではポルフィリンと赤み(ヘモグロビン)に反応し毛細血管を細くし赤みを改善するはたらきがあります。
IPLのフィルターはフィルター波長をピークにしそれより短い波長をカットしたものになります。420nmは波長が短いため、皮膚の深くまで到達せずしこりニキビのような深いニキビは効果が乏しい場合があります。
レーザー治療
589nmの波長のレーザーを使用します(アドバテックスレーザー)。レーザーを照射するとポルフィリンに吸収され一重項酸素(活性酸素)を発生させます。この一重項酸素はアクネ菌の殺菌効果があります。
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