筋肉の動きを調整することで外見や表情の変化をさせる注射
注入する部位は表情筋になりますが、表情筋の動きでできる「表情シワ」を改善させるアプローチではなく、筋肉の動きを調整することで効果が期待できる施術となります。「ガミースマイル/口角/人中/眉上の盛り上がり/鼻尖を高くする/たれ目/ほうれい線/目の開きを良くする」などがあります。
笑った時に歯茎が露出してしまう「ガミースマイル」、口角を下げる筋肉の動きを麻痺させることで自然に口角を挙上させる「口角ボツリヌストキシン」、口輪筋の浅層への注入で上唇をカールさせ人中を短くみせる「人中短縮ボツリヌストキシン」、眉上の盛り上がりの改善させる「眉上ボツリヌストキシン」、鼻尖を高くする注入「鼻先ボツリヌストキシン」、たれ目効果を出す「たれ目ボツリヌストキシン」、笑った時の強く目立つほうれい線を整える「ほうれい線ボツリヌストキシン」、目の開きを良くする「眉下ボツリヌストキシン」などがあります。
各注入についての説明
ガミースマイル:上唇鼻翼挙筋、上唇挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋
口角:口角下制筋
人中短縮:口輪筋
眉上:皺眉筋、眼輪筋、前頭筋
鼻先:鼻中隔下制筋、鼻筋、上唇鼻翼挙筋
たれ目:眼輪筋
ほうれい線:上唇挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋
眉下:眼輪筋
ガミースマイル
ガミースマイルとは笑った時に上唇が過度に上がることで歯茎が過度に露出(3mm以上歯茎が見える)をしてしまう状態のことをいいます。ガミースマイルの原因は、歯科・口腔外科領域が原因となることが多く、「上顎が下顎と比べて発達しているため、上唇に収まり切らない」、「歯茎が発達して歯に覆いかぶさる範囲が大きい」、「歯が短く上顎の歯茎の見える範囲が広い」「上唇を挙上する筋肉(上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋)の力が強すぎる」などがあるといわれています。
治療方法は骨格や歯並びが原因の場合は「歯科矯正治療」や「外科的に上顎の骨を削り後方へ移動をする手術(ルフォー1型骨切り術)」を行います。歯茎が原因の場合は「歯茎の切除」を行います。筋肉が原因の場合では「ボツリヌストキシン注射」や「上口唇と歯茎の間の粘膜を切除することで上唇が動く範囲を抑える手術(上唇粘膜切除術)」を行います。
ガミースマイルの治療はボツリヌストキシンを除き、基本的に「元の状態には戻らない治療」となるため、笑い方や表情の変化のため違和感を感じてしまった際に完全に元に戻すことはできません。手術など大きな侵襲をともなう治療は避けたい場合や笑い方の変化をみるため原因が筋肉以外の場合ではボツリヌストキシン注射での治療で経過をみることもあります。
ガミースマイルへのボツリヌストキシン注射は小鼻の横あたりの上唇鼻翼挙筋への注入治療やYonsei Pointといわれる部位での「上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、小頬骨筋」への注入となります。
リスク、副作用
上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋は笑った際に上唇を挙上させる筋肉となります。薬剤の拡散や筋肉の走行の左右差のため、左右の効き方に違いが出て笑った際の表情の左右差や笑った時のぎこちなさが出る可能性があります。
効きすぎると上唇が垂れ下がり、間延びしたような顔になる可能性があります。
口角
口角ボトックスともいわれています。下唇を下げる筋肉には口唇下制筋と口角下制筋があります。この2つの筋肉のうち口角を下方向に下げる筋肉である口角下制筋を麻痺させることで挙筋の活動を強くし、口角を挙上させやわらかい表情にします。口角下制筋は浅層に位置するため浅い部位への注入を行います。口角を下げる筋肉には広頚筋もあり、口角付近へ縦ジワをともなう際は広頚筋への注入を併用することでより効果的となります。
リスク、副作用
口角下制筋の周囲には口輪筋や口唇下制筋が走行しているため、周囲の筋肉へ拡散してしまうと食べにくさ、しゃべりにくさ、唾液が垂れる、笑った際の左右差やぎこちなさなどの症状が出現することがあります。
口角下制筋が麻痺をすることで相対的に大頬骨筋や小頬骨筋、笑筋の活動が強い状態となり、笑ったときのほうれい線が深く感じるようになる可能性があります。
人中
人中短縮ボトックスともいわれます。唇を外転(カール)させることで薄い唇を自然にふっくらと見せる効果があります。
口輪筋は2層構造でできているため、浅層に対してボツリヌストキシンを注入することで深層の筋線維が相対的に過活動となることで巾着袋のように口唇が前方に反転し、赤唇の厚みが出て口唇の厚みが増して見えるようになります(巾着袋の紐をしめると、紐より外側の部分が反り返るのと同じような状態となります)。
ヒアルロン酸を併用することでボリュームアップをし、より効果的となります。
リスク、副作用
口輪筋へ強く作用してしまうと、ストローの吸いにくさや口の動かしにくさ、しゃべりにくさなどが出現する可能性があります。
眉上
眉上ボトックスともいわれます。眉丘筋といわれる部位へのボツリヌストキシンの注入です。眉丘筋といわれる部位への注入なのですが、眉丘筋という筋肉は存在せず「眉付近の筋肉が重なり合って丘のように盛り上がってる部位の通称」となります。重なっている筋肉は「皺眉筋、眼輪筋、前頭筋」となります。眉上の盛り上がりや眉毛の吊り上がりを改善させる効果があります。
リスク、副作用
前頭筋への作用により、前頭筋を使い目の開眼を補っている方では目の開けにくさの自覚や、二重幅の変化などを生じることがあります。
眉間への注入時に上眼瞼挙筋に拡散してしまうと、医原性眼瞼下垂を起こしてしまうことがあります。また、外眼筋へ拡散をすると複視を呈することがあります。眼窩内のため、オビソートの注入は難しく開眼困難時はアイオジピン点眼を使用する場合があります。
鼻先
鼻先ボトックスともいわれます。鼻先を下方向にひっぱる「鼻筋」と「鼻中隔下制筋」へのボツリヌストキシンの注入です。笑顔時に鼻先が下がる場合では「上唇鼻翼挙筋」への注入も行います。
リスク、副作用
鼻筋、鼻中隔下制筋が発達している人では効果が実感できますが、そうでない人では効果実感が乏しく、個人差が大きい施術です。
たれ目
たれ目ボトックスともいわれます。目を閉じる働きのある眼輪筋のうち目の下の外側にボツリヌストキシンを注入し眼輪筋の働きを部分的に弱めることで下まぶたを下げてたれ目にします。
リスク、副作用
弾力性が低下している場合では下眼瞼(目の下)へのボツリヌス注射によって、目の下が強く外反し目の閉じにくさの自覚症状(ドライアイ、流涙など)、目の下の膨らみ(目袋)が悪化することがあります。また、涙袋近くの下眼瞼部への注入により涙袋の消失することもあります。
ほうれい線
ほうれい線ボトックスともいわれます。ヒアルロン酸のほうれい線への注入では自然な状態でもボリュームがでるためほうれい線が目立たなくなりますが、ほうれい線へのボツリヌストキシンは笑顔時にほうれい線が深くなるのを抑えたり整える目的での注入となります。
ほうれい線は上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋の働きによって出現しますが、主に上唇鼻翼挙筋への注入が行われます。注入部位もガミースマイルと同じ位置になりますが、上唇鼻翼挙筋は浅層を走行するため、浅めでの注入を行います。鼻翼基部から頬にかけて強く入るほうれい線では大頬骨筋の活動が強い場合があり大頬骨筋への注入を行います。笑顔時に鼻翼基部付近に食い込むようにほうれい線が目立つ場合は、鼻翼基部へ浅く注入を行います。
リスク、副作用
ほうれい線改善のためのボツリヌストキシンの注入は笑顔の左右差や表情の変化が起きやすいため、注入に注意が必要となります。
眉下
眉下ボトックスや眼瞼下垂ボトックスともいわれます。目の開きを改善させるボツリヌストキシンの注入方法は「眉下外側部分へ注入」を行う方法と「上瞼の目頭側の眼縁から5mmの位置と目尻の眼瞼部眼輪筋へ注入」を行う方法があります。目を閉じる働きをする眼輪筋の作用を弱めることで、上眼瞼挙筋やミュラー筋の働きが相対的に強くなり目を大きく見せる効果が期待できます。
リスク、副作用
注入部位が眼窩内もしくは眼窩内に近いため、上眼瞼挙筋へ拡散をすると医原性眼瞼下垂となる可能性があります。