痩身ボツリヌストキシン注射

代謝が上がるなどのようなダイエット効果があるわけではなく、筋肉を委縮させることで「筋肉の体積を減少させ」見た目をすっきりと見せるボツリヌストキシン注射となります。肩(僧帽筋や三角筋)、腕(上腕三頭筋や上腕二頭筋)、ふくらはぎに注入することで筋肉を委縮させ肩のラインを整える効果や筋肉質な腕やふくらはぎをすっきりと見せる効果が期待できます。

肩ボツリヌストキシン(肩ボトックス)

僧帽筋は首の後部から上背部にかけて広範囲に覆う表層筋です。肩甲骨は肩甲骨の挙上(肩をすくめる動作)や上方回旋、内転、下制の運動に作用する筋肉で肩関節周囲のバランスや上肢運動にも関わる筋肉の1つです。僧帽筋へのボツリヌストキシン注射は「盛り上がった肩を整えることですらっとした肩のラインにし、首から肩をすっきりと見せる」効果が期待できる注射となります。首をすっきりと見せるために広頚筋へのボツリヌストキシン注射も効果的となります。

前かがみになるデスクワークや猫背のようにかがむ姿勢を続けることで僧帽筋の収縮が続くと、僧帽筋が肥厚し、肩こりや頭痛を生じることがあります。外見上も肩が盛り上がり、首が短くみえるようになることがあります。盛り上がった僧帽筋の筋肉にボツリヌストキシンを注入することで、筋肉の緊張をとり筋肉量を減少させます。

肩ボツリヌストキシンで注入する筋肉は僧帽筋上部となり「肩をすくめる動作で注入する位置を確認することができます」。効果はボツリヌストキシンによる筋肉の廃用萎縮のため、注射をしてから2週間後から効果が出始めて1か月でしっかりと出現し、2~3か月でピークを迎えます。3~6か月で筋肉量は戻り始め、3~12か月(大体は6か月ぐらい)で元のサイズに戻ります。

首部分への注入を行うクリニックもありますが、エコーを使用し筋肉を特定しての注入をせずに、ブラインドでの注入ではどの深さでどの筋肉に作用をするかがはっきりとしないため、首の筋肉(頭板状筋、頚板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋など)に意図せず過度にボツリヌストキシンが作用してしまうと首を支えにくくなるなどのリスクがあるため、首のラインより外側への注入が安全な注入部位となります。

首のこりや首をすっきりと見せるために胸鎖乳突筋への注入を行うクリニックも稀にあります。胸鎖乳突筋は首の側面にある筋肉で首の回旋(頭を左右に回す)や嚥下(ものや水分を飲み込む)時に関与する筋肉になります。胸鎖乳突筋への注入は痙性斜頸といわれる病気でボトックスの注入が保険適応となっていますが、その添付文章上「胸鎖乳突筋に投与する場合は、嚥下障害発現のリスクを軽減するため、両側への投与を避けること」と記載があります。

注入の頻度

肩や首をすっきりと見せる注入は「筋肉の廃用萎縮」の効果によるものとなります。筋肉の回復までは6か月ほど要するため、6か月毎が目安となります。注入単位数が少なく筋萎縮の効果をより高めたい場合は3~4か月での注入を行います。肩の盛り上がりの原因が筋肉ではなく、骨(肋骨)が原因のときはボツリヌストキシンでの効果が十分感じられない場合があります。

肩こりなどの痛みは筋肉の運動に伴うもののためボツリヌストキシンとしての効果が切れる3~4か月毎の注入が目安となります。

副作用やリスク

三角筋への同時注入や肩関節近くへの注入で三角筋にボツリヌストキシンが拡散してしまうと腕がもちあげにくくなる危険性があります。

僧帽筋の尾側側での注入、特に肩痛軽減目的で肩甲骨内側への注入で小菱形筋や大菱形筋付近への注入では肺に穿刺をしてしまい気胸となる危険性があります。

首への注入により嚥下障害や首の運動制限などを生じる危険性があります。

腕痩せボツリヌストキシン

腕痩せボトックス、三角筋ボトックス、上腕三頭筋ボトックス、上腕二頭筋ボトックスともいわれます。上腕は脂肪、筋肉、皮膚のたるみや姿勢などの影響を受けて太くみえるようになります。筋肉の場合は三角筋や、上腕三頭筋の筋肉の発達により筋肉のラインがはっきりした隆々とした太いがっしりとした腕となり、三角筋の肥大では肩幅が大きくみえてしまうためその改善効果が期待できます。脂肪が原因である場合はボツリヌストキシンの注入による効果が得られにくく、ふりそでといわれるような二の腕部分の柔らかい脂肪が気になる場合は脂肪吸引などが適応となります。

三角筋

三角筋は上腕骨頭を覆う三角形の筋肉で、肩関節の運動に関与する筋肉の1つで前部・中部・後部の3つに分けられます。

前部は肩関節の屈曲(腕を前にあげる)と内旋(腕を前に出す)。

中部は肩関節の外転(腕を横に広げる)。

後部は肩関節の外旋(腕を後ろに引く)と伸展(腕を広げた状態から伸ばす)。

三角筋へのボツリヌストキシン注入により肩の張り出しを改善し直角のラインをつくる効果が期待できます。腕を上げる動作の際に主に働く筋肉のため、注入単位が多い場合や僧帽筋と同時での注入で単位数が多い場合は腕が上がりにくくなる可能性があります。

上腕三頭筋

上腕筋は腕を伸ばした際に後ろから浮き出る筋肉で、肘関節の進展、肩関節の進展、肩関節の内転の働きがあります。主に腕を伸ばす働きをします。位置はちょうど二の腕のふりそでといわれる部分になるため、ふりそで部分の脂肪吸引後に筋肉が目立ち気になる場合や後ろからの腕の筋肉質さを目立ちにくくしたい場合に適応となります。

上腕二頭筋

上腕二頭筋は力こぶをつくったときにポコッと筋肉が隆起し目立つ部位となります。肘関節の屈曲、肩関節の屈曲、前腕の回外に作用します。主に肘を曲げる働きをするため、ボツリヌストキシンの注入で腕が太く筋肉質さが強い状態を目立ちにくくする効果が期待できます。物を持ち上げるときに特に使う筋肉になるため、持ち上げにくさの自覚が出やすい筋肉となります。僧帽筋や三角筋へのボツリヌストキシン注射と併用することで持ち上げにくさを強く自覚する可能性があります。

注入の頻度

「筋肉の廃用萎縮」の効果によるものとなります。筋肉の回復までは6か月ほど要するため、6か月毎が目安となります。また、上腕三頭筋や三角筋は物の持ち上げにくさを自覚しやすいため1回あたりの注入単位数を減らし、副作用を起きにくくし3~4か月毎での注入で複数回に分けた注入を行うことがあります。

ふくらはぎボツリヌストキシン

ふくらはぎボトックスともいわれています。腓腹筋が発達していると下腿のふくらはぎ部分が隆起し、足首との太さの違いが際立つことで「ししゃも足」と言われるような状態となります。下腿が太く見える原因としては、皮下脂肪や浮腫でも起こりえます。浮腫では足首付近や足背に指で押した際にへこんだ後がついたり靴下の跡が残ります。皮下脂肪ではつま先立ちをするなど下腿の筋肉に力を入れた状態で硬くならずに厚みが実感されます。筋肉が原因でぽっこりと隆起した場合に筋肉へのボツリヌストキシン注射の効果が期待できます。

腓腹筋は内側と外側で構成され、後ろから見た時の筋肉の隆起の原因となります。足関節の底屈(つま先立ちやジャンプの蹴りだしなど)や膝関節の屈曲に作用します。腓腹筋の深部にはヒラメ筋が位置しています。ヒラメ筋は足関節の底屈にのみ作用する筋肉です。

ふくらはぎをすっきりとしたラインとする目的の場合は腓腹筋へボツリヌストキシンの注入を行います。

「筋肉の廃用萎縮」の効果によるものとなります。筋肉の回復までは6か月ほど要するため、6か月毎が目安となります。ヒールなどを常に履いていると、足関節を底屈した状態が続くためボツリヌストキシン注射の効果が短くなる可能性があります。

副作用やリスク、注意点

ヒラメ筋の働きにより脚の動きは維持されるため、歩行障害などの機能障害は生じることはほぼありませんが、過度な単位数の注入によりつま先立ちがしにくくなる歩行のしにくさが出現する可能性や、筋力バランスの変化により転倒しやすくなる可能性があります。

注入の深さが浅すぎると皮下脂肪へのボツリヌストキシン注入となり効果が出ない場合があります。深すぎると、ヒラメ筋、長趾屈筋、後脛骨筋、長母趾屈筋への注入や神経損傷の可能性があります。