パンチテクニックとは?

パンチテクニックは、深いニキビ跡のクレーターを外科的に除去・改善する治療法です。 皮膚生検用のデルマパンチ(円形メス)を使用し、アイスピック型のような深くてV字状のクレーターやボックスカー型のような縁がはっきりとして底面が平らなU字状のクレーターの治療に用いられます。

パンチテクニックは主に以下の3種類に分類されます。

これらの方法は、ニキビ跡の形状や深さに応じて使いわけられます。

パンチテクニックの種類と詳細

パンチエクシジョン(パンチ切除法)

概要

パンチエクシジョンはアイスピック型瘢痕に適しています。瘢痕よりわずかに大きいデルマパンチを使用して、瘢痕の外縁からクレーターのある深さまで切除をします。切除後は皮膚割線に沿って皮膚を縫合することで、目立っていたアイスピック型瘢痕やボックスカー型瘢痕を目立たない線状瘢痕に変える治療となります。切除後に縫合を行わない場合はくりぬいた部分がいわゆる白色の「成熟瘢痕」へとなっていきますが、小さい場合では縫合をしない場合があります。

適応となる萎縮性瘢痕のタイプ

アイスピック型瘢痕

小さいボックスカー型瘢痕

治療手順
  1. 局所麻酔を行い、痕跡周囲の痛みを軽減します。
  2. 直径2~3mmのデルマパンチを使って、瘢痕をくり抜き、瘢痕組織を除去します。
  3. 皮膚を皮膚割線に沿うように縫い合わせて、目立ちにくい線状の傷跡とし、抗生剤の内服を行います。縫合をしない場合は軟膏+テープ保護を上皮化するまで7~10日程行います。
  4. 1週間後に抜糸を行います。
メリット
  • 深い瘢痕を1度で完全に除去ができます
  • 傷跡が線状になることで、目立ちにくくなります
デメリット
  • 瘢痕の間隔は少なくとも4〜5 mm以上は必要となります(違うタイミングでの治療であれば近くても可能です)
  • 大きさが3〜3.5 mmを超える瘢痕の場合は、紡錘形処理をし縫合をする必要があります
  • 小さな線状の傷跡が残ります
  • 瘢痕が多数ある場合は治療に時間がかかります
  • 色素沈着、肥厚性瘢痕、ケロイドを生じる可能性があります

治療に伴うリスクはその他に「感染、血腫、痛み、しこりの形成、痛みの長期化、感覚異常など」が起こりえます。

線状の傷跡はレーザー治療などにより軽減することができます。

パンチエレベーション(パンチ挙上法)

概要

]クレーターの縁が直角で底が平らなボックスカー型瘢痕に適した方法です。瘢痕よりわずかに大きいデルマパンチを使用して、瘢痕の外縁から皮下組織までくりぬきます。次に、攝子などを使用してクレーターの底面を持ち上げて縫合します。縫合をせずに「ステリストリップ」で固定する場合もあります。

適応となる萎縮性瘢痕のタイプ

ボックスカー型瘢痕

治療手順
  1. 局所麻酔を行い、痕跡周囲の痛みを軽減します。
  2. 瘢痕部分よりやや大きいデルマパンチを使って、瘢痕をくり抜きます。
  3. くりぬいたボックスカー型瘢痕の底面を攝子などを使用して周囲の皮膚よりわずかに高くなるように持ち上げて縫合します。抗生剤の内服を行います。縫合をしない場合はステリストリップを使い固定をします。
  4. 1週間後に抜糸を行います。
メリット
  • 周囲の皮膚との段差が減ることで目立ちにくくなる効果が期待されます
  • 傷跡は目立ちにくいです
デメリット
  • 深い瘢痕の場合は十分な高さまで持ち上がらない可能性があります
  • パンチングを行った部位にリング状の傷跡が残る可能性があります
  • 瘢痕が多数ある場合は治療に時間がかかります
  • 色素沈着、肥厚性瘢痕、ケロイドを生じる可能性があります

治療に伴うリスクはその他に「感染、血腫、痛み、しこりの形成、痛みの長期化、感覚異常など」が起こりえます。

リング状の傷跡はレーザー治療などにより軽減することができます。

③パンチグラフト(パンチ移植法)

概要

アイスピック型瘢痕もしくはボックスカー型瘢痕をパンチエクシジョン後に皮膚移植片を定着させる治療法になります。皮膚移植片は、一般的には耳の後ろから採取され、採取後は縫い合わせます。皮膚移植片をパンチエクシジョンした部分に埋め込み固定をします。縫合をする場合もあります。約1週間で皮膚は生着しますが、皮膚の質感が異なった状態となります。

適応となる萎縮性瘢痕のタイプ

ボックスカー型瘢痕

アイスピック型瘢痕

治療手順
  1. 局所麻酔を行い、痕跡周囲の痛みを軽減します。
  2. 瘢痕部分よりやや大きいデルマパンチを使って、瘢痕をくり抜き、瘢痕組織を除去します。
  3. 耳の後ろから採取した皮膚移植片を埋め込み固定をします。もしくは高さを揃えて縫合します。抗生剤の内服を行います。
  4. 1週間後に抜糸を行います。
メリット
  • 深い瘢痕を目立ちにくくすることができます
  • 健康な皮膚を移植するため、瘢痕組織と異なり自然に見えます
デメリット
  • 肌の色や質感が周囲と馴染まない可能性があります
  • パンチングを行った部位にリング状の傷跡が残る可能性があります
  • 色素沈着、肥厚性瘢痕、ケロイドを生じる可能性があります

治療に伴うリスクはその他に「感染、血腫、痛み、しこりの形成、痛みの長期化、感覚異常など」が起こりえます。

リング状の傷跡や移植片と顔の肌の質感の違いはレーザー治療などにより軽減することができます。

まとめ

パンチテクニックは、深いニキビ跡を外科的に除去する「パンチエクシジョン」、深いニキビ跡の底面を持ち上げる「パンチエレベーション」、他の部位から皮膚移植を行う「パンチグラフティング」があり、深いニキビ跡を目立ちにくくする有効な治療法の1つです。

特にアイスピック型やボックス型の瘢痕に適しており、レーザー治療では改善が難しい場合に高い効果が期待できます。肌の状態によりTCAクロスや炭酸ガスレーザーのアブレーション、サブシジョン、レーザー治療などを併用もしくは使い分けることでより治療効果が高まることが期待されます。

外科的治療のため施術後に小さな傷跡が残るため、目立ちにくくするために術後の適切なケアが必要となります。

参照

Linlin Miao et al. Modern techniques in addressing facial acne scars: A thorough analysis. Skin Res Technol. 2024 Feb;30(2):e13573.