白癬(水虫)
白癬(水虫)とは?
水虫(正式には「足白癬(あしはくせん)」)とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚に感染することで起こる皮膚の病気です。主に足に症状が出ることから「水虫」と呼ばれていますが、手や体、爪などにも感染することがあります。日本国内では成人の約1割以上が水虫にかかっているともいわれています。
水虫は感染力が強く、特に家族内での感染が多いため、早期の発見と適切な治療が重要です。治療せずに放置すると、慢性化したり、爪や他の部位に広がったりすることがあります。
原因
水虫の原因は、「白癬菌」と呼ばれる皮膚糸状菌の一種が皮膚に感染をすることで発症をします。白癬菌は高温多湿の環境を好むため、特に汗をかきやすい夏場や、靴の中が蒸れやすい状況で繁殖しやすくなります。
感染の主な経路は以下の通りです:
- 共用スリッパやバスマットなどからの感染
白癬菌は角質に住み着くため、皮膚から剥がれ落ちたフケや皮膚片に潜んでいます。こうしたものに触れることで感染が広がります。 - 家庭内感染
家族の誰かが水虫を持っている場合、共有する風呂場や床、タオル、靴などを通じて感染が起こりやすくなります。 - スポーツジムやプール、銭湯などの公共施設
不特定多数の人が裸足で歩く場所では、白癬菌が存在している可能性が高く、注意が必要です。
感染しやすい部位
水虫は「足」にできるものという印象が強いですが、実際には白癬菌はさまざまな部位に感染します。
- 足(足白癬、水虫)
特に足の指の間(趾間)や足の裏に好発します。靴の中の蒸れが原因で感染が広がりやすいです。 - 爪(爪白癬)
爪が白く濁ったり、厚くなったり、もろくなったりします。足の水虫から感染が広がることが多いです。 - 手(手白癬)
足から手に感染するケースで、手のひらの皮むけ、乾燥、ひび割れが起こり、片手だけに出ることが多いです。手湿疹によるあかぎれと間違われることがあります。 - 体部(体部白癬、タムシ、ゼニタムシ)
胴体、腕、脚などに円形の赤い発疹が現れ、かゆみを伴います。 - 股(股部白癬「こぶはくせん」、インキンタムシ)
股間、陰部、太ももの付け根などに赤くかゆい発疹が出てきます。 - 頭部(頭部白癬)
子どもに多く、フケや脱毛、炎症が見られます。
症状
水虫の症状は感染部位やタイプによって異なります。足にできる水虫は、大きく以下の3タイプに分類されます。水虫はかゆみを伴うという印象が強いですが、かゆみを伴わないことも多くあります。
趾間型(しかんがた)
足の指の間が白くふやけ、皮がむけたり、かゆみが生じたりします。最も一般的なタイプです。
小水疱型(しょうすいほうがた)
土踏まずや足の側面に小さな水ぶくれができ、強いかゆみがあります。水疱が破れるとじゅくじゅくします。
角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)
足の裏の皮膚が厚くなり、ガサガサと硬くなります。かゆみはあまりありませんが、慢性化しやすいです。
健康サンダルなどの刺激による角化や強いかゆみ、足底亀裂性皮膚炎との鑑別を要します。
爪白癬の場合は、爪が白く濁ったり、黄ばみ、厚くなる、脆くなるといった変化が見られます。放置すると爪全体が変形してしまうこともあります。
検査
水虫の診断には、医師による視診に加えて以下のような検査を行います。検査前に市販されている治療薬を塗ると白癬菌が検査で検出されにくくなり、正確な診断が難しくなることがあります。また、水虫は足の異汗性湿疹と区別が視診のみでは難しく、白癬機の感染の有無を検査する必要があります。
- 顕微鏡検査(KOH検査)
患部の角質や爪を少し採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認します。結果は数分でわかります。
これらの検査により、水虫かどうか、または別の皮膚疾患(湿疹や皮膚炎など)であるかを明確にします。
診断
水虫の診断は、上記の検査結果と患者様の症状、既往歴などを総合的に判断して行います。特に、自己判断で水虫と誤解しているケースが多く、実は異汗性湿疹や接触性皮膚炎だったということもあります。水虫は抗真菌薬で治療をし、異汗性湿疹はステロイドでの治療を行いますが、逆に使用をしてしまうと悪化してしまいます。
鑑別を要する病気としては、接触皮膚炎、異汗性湿疹、掌蹠膿疱症、細菌感染、健康サンダルや軽石での刺激による痒み、亀裂性皮膚炎などがあり、正しい診断のために診察と検査が必要となります。
治療法
水虫の治療は、主に抗真菌薬を使用します。感染部位や症状によって治療法が異なります。
- 外用薬(塗り薬)
抗真菌成分を含む塗り薬での治療を行います。通常は軟膏ではなくクリームのものを使用しますが、患部がジュクジュクとしている場合では軟膏を使用します。軟膏は刺激が少なく、傷口やただれのある患部にも使用が可能で、クリームは皮膚から吸収されやすく、刺激が軟膏より強いため、傷口やただれのある幹部への使用には適しません。
外用薬で2週間程治療をすると水虫の症状は治りますが、白癬菌は死滅せずに皮膚の角質層に残っていることがあります。菌が残っていると外用薬を中止した後しばらくして水虫が再発してしまいます。外用薬を塗る期間は症状が消失してから、白癬菌が完全にいなくなる目安が最低1ヵ月といわれています。
塗る範囲は症状のある患部以外にも白癬菌が感染していることも多いため、薬を自覚症状がある部分だけでなく、両方の指の間から足裏全体に最低1カ月毎日塗り続けることが大切になります。
角質増殖型では角化が強く薬が浸透しにくいため、抗真菌薬の塗り薬のみでは治りにくいため、角質を柔らかくする働きのある尿素製剤と重ね塗りもしくは混合することがあります。 - 内服薬(飲み薬)
爪白癬や広範囲の水虫、塗り薬では効果が乏しい場合に使用されます。爪白癬では効果が出てくるのに3か月程期間を要します。治療期間は3~6か月を要し、肝機能障害を生じることがあるため、治療中は定期的な血液検査が必要となります。
薬の飲み合わせも相互作用のため問題となることが多く、注意が必要となります。また、肝機能障害を起こしうる薬のため、治療期間中のアルコール摂取は控えた方が良いといわれています。
注意点
水虫は家族内で感染を起こしやすいため、バスマット・スリッパは共有しないようにし、床をよく乾かすようにすることで感染しにくくなります。また、白癬菌は床に落ちた角質にも潜んでいるため、掃除機や拭き掃除でこまめに清掃をすることも重要です。スリッパなどを消毒用エタノールで拭いて消毒を行うことも有効です。
外出時はスポーツジム、温泉、プール、ホテルなどの共用シャワーやスリッパは感染リスクがあります。自分用のものを用意し使用することが理想的ですが、難しい場合は足を洗い流して乾かすようにすると感染を防ぐ効果が期待できます。
水虫の症状が出現してもそのまま放置し、蒸れによりジュクジュクとして強い炎症やかゆみを伴う場合や塗り薬で患部がかぶれてしまった場合はステロイドの塗り薬でかぶれやジュクジュクの治療を行う場合があります。
自己判断で市販薬を使用すると、原因が湿疹の場合に水虫用の外用薬を使用すると悪化してしまう場合があります。水虫に対してステロイド外用薬を使用してしまうと、炎症が落ち着くため一時的に症状が治まり、診断が難しくなる「ステロイド隠蔽白癬(tinea incognito)」を引き起こすこともあります。
趾間が蒸れることで、細菌感染を単独で起こす、もしくは水虫に合併して細菌感染を起こすことがあります。そういった場合はアクアチムクリームもしくは軟膏での治療を必要とする場合があります。