新型コロナウイルス
新型コロナウイルスについて
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年末に中国・武漢で確認されて以来、世界中に拡大した感染症です。ウイルスの正式名称は「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」で、主な感染経路は飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染といわれています。発熱、咽頭痛、咳などの症状の他にさまざまな全身症状を引き起こすことがあります。高齢者や基礎疾患のある方などでは重症化する場合があります。
新型コロナウイルス感染症の位置づけは、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」とされていましたが、令和5年(2023年)5月8日から「5類感染症」になりました。5類になることにより、法律に基づく外出自粛要請がなくなり、医療費の負担は公費補助がありましたが通常の医療と同様自己負担がかかるようになり、学校の出席停止期間の変更などがなされました。
新型コロナウイルスの予防接種
新型コロナウイルスワクチンを予防接種することにより、発症率や重症化率を下げることができるといわれています。5類感染症となる前は公費での接種が行われていましたが、全額公費による接種は令和6年(2024年)3月31日で終了しました。
令和6年4月1日以降、65歳以上の方及び60歳から64歳で一定の基礎疾患を有する方には、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として秋冬に自治体による定期接種が行われ、各自治体において設定した自己負担額がかかります。定期接種以外で接種を希望される方は、任意接種として、自費で接種が取り扱いのある医療機関で可能となっています。
感染の原因
新型コロナウイルスが、目・鼻・口などの粘膜に感染をすることで発症をします。
感染経路として飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染があります。
飛沫感染(ひまつかんせん)
- 感染者の咳やくしゃみ、会話時の飛沫に含まれるウイルスを、他の人が吸い込むことで感染します
- 飛沫は1〜2メートル以内の距離で感染しやすいです(発症した方はウイルスが飛散しないようマスク着用が推奨されます)
エアロゾル感染(えあろぞるかんせん)
- 感染者のウイルスを含んだ咳やくしゃみ、会話時の飛沫のうち、液体を含んだ小さい粒子は空気中ですぐに乾燥します。水分を含まなくなると軽くなるため、一定条件のもと空中に数分~数時間浮遊します。この「エアロゾル:空中に漂う小さい粒子」を吸い込むこで他の人が感染します
- 密閉された換気の悪い空間では、より長い時間ウイルスが浮遊するといわれています(定期的な換気が感染予防に必要といわれています)
接触感染(せっしょくかんせん)
- ウイルスが付着した手すり、ドアノブ、スイッチ、スマホなどに触れた手で鼻・口・目をこすったりすることで感染します
- ウイルスは手指や環境表面でも数時間生存するため、手洗い不足や手洗いをしないことにより感染します
症状
以下のような症状が出現します。
- 高熱
- 頭痛
- 筋肉痛・関節痛
- 倦怠感
- 咳、のどの痛み
- 鼻水・鼻づまり
- 胃腸症状(下痢)
- 嗅覚・味覚異常
高齢者や基礎疾患がある方は重症化のリスクが高く、注意が必要です
通常の風邪と比べると症状が重いことが多いですが、熱だけの症状のことや、37度台の微熱のこともあるため、流行期や診察により検査をお勧めすることがあります。
新型コロナウイルスにかかった後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に原因が明らかでなく、何らかの症状が持続している状態をlong COVID(ロングコビッド)(新型コロナ後遺症)といいます。
検査
「SARS-CoV-2迅速抗原検査」を行います。鼻の奥の粘膜を綿棒で擦りとり、ウイルス感染をしているかの検査をします。検査は10分ほどで出て、判定結果が出ます。インフルエンザとの鑑別が難しいといわれ、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時迅速抗原検査を行うこともあります。
検査のタイミング
インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルスの迅速抗原検査を行う適切なタイミングは、ウイルスが増殖をし検出できるウイルス量が存在している必要があります。インフルエンザでは熱が出てから12時間~48時間以内、新型コロナウイルスでは12〜72時間以内に抗原検査を行うと正確な結果が出やすいといわれています。発症後すぐの検査では 検出率が低くなり、症状があっても偽陰性(陰性でも感染している)となることがあります。
治療
発熱や咳などの症状を和らげる対症療法の治療を行います。
診察の結果、必要により抗ウイルス薬の治療を行います。
モルヌピラビル(ラゲブリオ)
18歳以上の重症化リスクを有する方へ処方される薬で、軽症~中等症の方に処方されます。発症から5日以内に内服を開始し、症状が悪化しないようにし、「入院や死亡などの重症化を防ぐ」ことが目的となります。
1回800mg(200mgのカプセルを4つ) 1日2回 12時間ごとに 5日間
飲み始めのタイミングによっては6日間内服することもあります。妊娠中もしくは妊娠が疑われる方は内服できません。
ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)
成人又は12歳以上かつ体重40kg以上の小児で、重症化リスクを有する方に処方へ処方される薬で、軽症~中等症の方に処方されます。発症から5日以内に内服を開始し、症状が悪化しないようにし、「入院や死亡などの重症化を防ぐ」ことが目的となります。
1回1パッケージ(ニルマトレビル2錠、リトナビル1錠の計3錠) 1日2回 12時間ごとに 5日間 (腎機能により調整が必要)
飲み始めのタイミングによっては6日間内服することもあります。 妊婦または妊娠している可能性がある方は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することが可能となっています(ラゲブリオとゾコーバは妊娠中の内服はできません)。
併用ができない、もしくは注意が必要となる薬剤が多数あります。
【参考情報】『「パキロビッド®パックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」の公開について 』国立国際医療研究センター
https://www.hosp.ncgm.go.jp/phar/140/20220210.pdf
エンシトレルビル (ゾコーバ)
12歳以上の小児及び成人に処方へ処方される薬で、軽症~中等症の方に処方されます。発症から72時間以内に内服を開始し、症状が改善するまでの時間を短縮する(約1日)ことが目的となります。
※重症化リスクを有さない方への処方も可能となっています。重症化を予防する効果はありません。
初回のみ1回3錠、2回目以降1回1錠 1日1回 24時間ごとに 5日間
併用ができない、もしくは注意が必要となる薬剤が多数あります。
妊娠中もしくは妊娠が疑われる方は内服できません。
咳や喉の痛み、倦怠感、味覚、嗅覚異常など14症状のいずれかの長期持続を認める患者の割合を45%、4つの神経症状(課題解決力、集中力・思考力の低下、物忘れ、不眠)の発現を認める患者の割合を33%の相対リスクを下げたという結果が報告され、感染初期に服用することで、後遺症のリスクを低減できる可能性があります。
【参考情報】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の 早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ―国際学会CROI 2023において新規データを発表― 塩野義製薬
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2023/2/20230222.html
予防
新型コロナウイルスの予防接種が一定の発症予防効果があります。
日常生活での小まめな手洗い、うがいやマスクの着用、定期的な室内の換気などが予防になります。
注意点
学校における出席停止期間については下記の通りとなります。学校保健安全法で規定されており下記の通りとなります。
幼稚園、保育園、小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校
学校保健安全法で新型コロナウイルス感染症の出席停止期間はかつ、症状が軽快した後1日
を経過するまで
①発症後 5 日を経過(症状が出現した発症日を0日とする)
②症状が軽快した後1日(熱が下がり平熱となった日を0日とする)
を満たす必要があります。
※インフルエンザの際は解熱した後2日(幼児にあっては3日)となっているため日数に違いがあります。
専門学校
専門学校は学校教育法の学校には指定されていないため、学校保健安全法では出席停止期間などは定められておらず、専門学校独自で規定があると思われるため、専門学校への確認が必要です。
幼稚園・保育園
幼児の場合は学校保健安全法でインフルエンザ出席停止期間は
①発症後 5 日を経過(症状が出現した発症日を0日とする)
②症状が軽快した後1日(熱が下がり平熱となった日を0日とする)
を満たす必要があります。
職場
会社はインフルエンザに関する法律はないため、会社毎の就業規則によります。
多くの会社では、学校保健安全法に基づき、「発症後5日を経過」かつ「症状が軽快した後1日」を出勤停止に定めていることが多いですが、規定のない場合や会社により出勤停止のルールが異なるため、勤務する会社の就業規則を確認する必要があります。