ボツリヌストキシンとはボツリヌス菌が産生するタンパク質である「神経毒素」のことをいいます。ボツリヌス菌は食中毒を起こす菌として知られていますが、この毒素の作用を応用して治療に用いたものがボツリヌストキシン注射といわれています。ボトックスとして知られていますが、ボトックスは「アッヴィ合同会社 アラガン・エステティックス」の所有する登録商標のことで「商品名」を指します。ボトックスといえるのはボツリヌストキシン製剤のうち同社製品のみとなります。

ボツリヌストキシンについての説明

ボツリヌストキシンは注射で体内に注入することにより、筋肉を麻痺させたり、汗腺や皮脂腺を抑制する効果を利用した治療に用いられます。注入量を表す方法として、mlやmgではなくUnit(単位)が用いられます。ボツリヌストキシン製剤の種類と特徴、効果の出方や弱いときに考えられる原因、耐性についての説明となります。

ボツリヌストキシン注射の注入部位と目的

ボツリヌストキシン注射は注入する目的と部位によって様々な効果が期待できます。

咬筋へのボツリヌストキシン注射

エラボツリヌストキシン注射やエラボトックス、エラボトともいわれます。咬筋へボツリヌストキシンを注入することで咬筋を委縮させ小顔効果や食いしばりの改善効果が期待できます。食いしばりの改善効果は側頭筋へのボツリヌストキシン注入も併用するとより効果的となります。

表情筋へのボツリヌストキシン注射

怒ったり笑ったり、目を見開いたりなど「表情を作ったときに動かす筋肉」でできるシワを抑え、表情ジワをできにくくする効果が期待できます。代表的な部位だと、「額/眉間/目尻/目の下/鼻根/鼻背/顎/目頭/人中」 などがあります。

筋肉の動きを調整することで外見や表情の変化をさせる注射

「ガミースマイル/口角/人中/眉上の盛り上がり/鼻尖を高くする/たれ目/ほうれい線/目の開きを良くする」などがあります。表情筋そのものの動きでできる表情ジワへのアプローチではなく、筋肉の動きを調整することで効果が期待できるものとなります。笑った時に歯茎が露出してしまう「ガミースマイル」、「口角を下げる筋肉を抑えることで自然に挙上させる口角への注入」、「口輪筋の浅層への注入で人中を短くみせる注入」、「眉上の盛り上がりの改善」、「鼻尖を高くする注入」、「たれ目となるような注入」、「ほうれい線への注入」、「目の開きを良くする」注入などがあります。

肩痩せ、腕痩せ、ふくらはぎの痩身ボツリヌストキシン注射

実際にダイエット効果があるわけではなく、筋肉を委縮させることで「筋肉の体積を減少させ」見た目をすっきりと見せるボツリヌストキシン注射となります。肩(僧帽筋や三角筋)、腕(上腕三頭筋や上腕二頭筋)、ふくらはぎに注入することで筋肉を委縮させ肩のラインを整える効果や筋肉質な腕やふくらはぎをすっきりと見せる効果が期待できます。使用する単位数は表情筋などと比べて多くなります。

唾液腺へのボツリヌストキシン注射

ボツリヌストキシン注射で適応となる部位は耳下腺と顎下腺があります。唾液腺が肥大していると耳下腺では顔が大きく見えたり、顎下腺では二重顎のように見えることがあります。エラボツリヌストキシン注射や顎下の脂肪吸引後でもフェイスラインや顎下が気になる場合は唾液腺が原因となる場合があります。

マイクロボツリヌストキシン注射

マイクロボツリヌストキシン注射はボツリヌストキシンを皮内に注入することで表情筋を強く抑えるのではなく動きを整え、毛穴や小ジワを目立ちにくくしたり、皮脂や汗を抑えニキビをできにくくしたりする効果が期待できます

広頚筋ボツリヌストキシン注射

マイクロボツリヌストキシン注射の1種になります。広頚筋へのボツリヌストキシンはプラティズマバンドといわれる首の縦ジワへ注入を行いすっきりとした首元にする効果、下顎骨下縁への注入とプラティズマバンド上半分付近への注入を行いフェイスラインをすっきりとさせ自然なリフトアップ効果が期待できるネフェルティティリフトがあります。

脇ボツリヌストキシン注射

局所性多汗症の治療方法の1つとして使用されます。 汗の原因となるエクリン腺はコリン作動性交感神経線維により支配されており、神経伝達物質はアセチルコリンであるためボツリヌストキシンがその治療に用いられます。

花粉症ボツリヌストキシン

ボツリヌストキシンを鼻粘膜に注入もしくは浸透させることで副交感神経の活動を低下させ、鼻汁の分泌を抑える効果が期待できます。ボツリヌストキシンを使用した花粉症治療は自費での治療となります。

ボツリヌストキシンが効きすぎた場合

オビソート(アセチルコリン塩化物)の注入やアイオジピン(アプラクロニジン塩酸塩)の点眼を行う場合があります。オビソートの注入はボツリヌストキシンによって神経筋接合部の神経終末で抑制されたアセチルコリン分泌を、外部からアセチルコリンの補充を行うことで動きやすくし、回復を促します。アイオジピン点眼はボツリヌストキシン注入後の瞼の開けにくさに対して、α2受容体を刺激しミュラー筋を刺激し眼瞼を開けやすくする働きがあります。