HIV/AIDS

概要

AIDSとはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、重篤な全身性免疫不全によりクリプトコッカス症やニューモシスチス肺炎といった真菌感染症や重度の単純ヘルペス感染症など重度の免疫力低下により発症する日和見感染症やカポジ肉腫などの悪性腫瘍を起こした状態のことをいいます。治療薬の開発が進み、早期に薬物治療を開始すれば免疫低下を起こさず通常の生活が送れるようになってきましたが、体内のHIVを完全に排除することはできず、生涯抗HIV薬の内服継続が必要となります。

潜伏期間

感染から症状が出るまで、初期症状は2~4週間、AIDS発症は数年から10年程

検査可能時期

感染機会から28日(第4世代抗原抗体同時検査)、13日(HIV-RNA検査) 最終的な陰性の診断は感染機会から3か月後の検査

感染部位

全身(粘膜、皮膚、傷のある部位から感染をします)

感染経路

HIVはHIVに感染した体液(感染が起こるのは主に、精液・膣分泌液・母乳)や血液を介して傷のある皮膚や粘膜から体内に侵入します。性行為による感染確率は0.1~1%といわれていますが、他の性感染症に感染し粘膜に炎症が起こっていると感染の確率が上がります。また、口腔や膣粘膜は重層であるが、直腸粘膜は単層で傷つきやすいため、肛門性交の方が感染リスクが高くなるといわれています。

涙や唾液、尿、便には感染を引き起こすだけのウイルス量はありませんが、口内炎や歯肉からの出血、切れ痔など血液を含む場合では感染をする可能性があります。主な感染経路は性交渉、血液を介した感染(注射器の使いまわしや針刺し事故、HIVを含む血液製剤の輸血、感染した臓器の移植など)、母子感染です。咳やくしゃみ、お風呂やタオルの共用、蚊に刺されての感染報告はなく体外に出るとすぐに不活化し、空気や水に触れると感染力を失います。

通常の膣性交だけでなく、オーラル(フェラチオやクンニリングスなどの口腔性交)やアナル(肛門性交)での感染も起こします。

通常のキスでは感染することはありませんが、口内炎や歯肉からの出血がある場合は感染する可能性があります。

症状

症状は感染初期(急性期)、無症候期、エイズ発症期にわけられます。感染初期の症状は50~90%でなんらかの症状が出現するといわれていますが、無症状の場合やHIVに特徴的な症状ではないため、多くはHIVの検査は行わないため疑って検査をしない限り診断をすることができません。

感染初期

感染後1~4週間でHIVは急激に増殖をしCD4陽性リンパ球が破壊されます。この時期に発熱、咽頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹、頭痛などインフルエンザ様の症状が半数以上で出現します。症状はほぼ無症状なものから重篤なものまでさまざまですが、初期症状は数日から数週間続き自然に軽快します。

無症候期

感染後の免疫応答によってウイルス量は一定レベルまで減少をします。症状は何も自覚がない状態のまま数年から10年程続きます。この時期は症状がないため、HIV検査を受けない限り感染をしていることがわかりません。体内ではHIVは増殖を続けて、CD4陽性リンパ球は徐々に減少し免疫が低下していきます。ある程度まで免疫が低下をすると、発熱やリンパ節腫脹、帯状疱疹を発症しやすくなり、繰り返す帯状疱疹、ヘルペス、カンジダ、赤痢アメーバ、理由のない体重減少などをきっかけにしてHIV感染が判明することもあります。

エイズ発症期

感染後治療を受けずにHIV感染が進行すると、カリニ肺炎などの日和見感染を起こしやすくなし、悪性腫瘍の発生や、るい痩(体重減少)が著明となります。HIV感染の診断を受け、エイズ指標疾患といわれる23の合併症のうち1つ以上を認められる場合をエイズといいます。

いきなりエイズといわれるエイズを発症してはじめてHIVの感染が発覚することをいい、増加傾向にあります。

検査及び治療

HIVの検査は一般的にスクリーニング検査と確認検査の二段階で行われます。スクリーニング検査には抗体検査(第1~3世代検査)と抗原抗体同時検査(一般的には第4世代検査ともいわれています)があり、主に第4世代検査が用いられます。ウィンドウ期は約28日といわれており、第1,2世代の50日、第3世代の32日より短くなっています。いわゆる、HIV検査といわれるのはこのうち第4世代検査を指すことが多いです。

スクリーニング検査で陽性であっても偽陽性の可能性があるため、確認検査が必要となります。HIV-RNA検査(核酸増幅検査)とHIV-1,2抗体確認検査を行い確定診断をおこなっていきます。核酸増幅検査のウィンドウ期は10~12日といわれており、13日を経過してからの検査となります。

最終的にHIV感染を否定するためには、感染機会から3か月経過後に検査をする必要があります。