膣トリコモナス

概要

膣トリコモナスは細菌ではなく、原虫といわれる単細胞で大きさは10~25μm程の寄生虫です。男女で感染する部位が異なり、男性では尿道感染から上行感染をおこし前立腺、精嚢。女性では子宮頚管、膣内、膀胱、尿道等の下部尿路となります。口腔内や直腸に感染することは一般的ではないといわれています。

トリコモナスの仲間には他に腸トリコモナス、口腔トリコモナスが人に寄生をします。、腸トリコモナスはペット感染で下痢を起こすことがありますが人の感染では症状がなく、口腔トリコモナスは歯周病の重症化に関与しているといわれています。

感染者の20~50%は無症状ですが、6か月以内でその3分の1で症状が出現するといわれています。発症までの時間も長く、はっきりとした感染機会がわからないことも多いです。

潜伏期間

感染から症状が出るまで1~3週間。発症までには6か月かかる場合もあります。

検査可能時期

感染機会の翌日から

感染部位

尿道、膣

感染経路

多くは性的な接触により感染をし、寄生部位も限られるため膣性交のみとなります。

性行為が未経験な女性や思い当たる行為をしていない場合でも感染をすることがあり、浴槽・便器・下着・タオルの共有(サウナマットなど)で感染する場合があります。

症状と感染部位

女性:悪臭の強いおりもの(魚の腐敗臭)、黄緑色の泡状のおりもの増加、排尿時痛、外陰部や腟の刺激感、強いかゆみ。

膣や子宮頸部の感染で上記の症状を引き起こします。稀ではありますが寄生部位が子宮や卵管に拡大することで、子宮内膜炎、卵管炎などを起こし不妊症や早産リスクが高まることもあります。

男性:無症状もしくは症状が軽く気づかないことも多いです。主に尿道炎の症状で、排尿時の軽い痛みや尿道口から少量の分泌物が出ることがあります。稀ではありますが、前立腺炎を起こすと排尿困難(尿のきれがわるくなる、出にくくなる)となることや排尿により原虫が流されても、虫体が尿道に再びでてくることで尿道炎を繰り返すことがあります。

検査および治療

症状には個人差がありますが、典型的な症状を呈さないことも多く、似た症状を呈する他の性感染症(クラミジア、淋菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、カンジダなど)との鑑別が必要となりますが、混合感染をしている場合も多いです。症状だけではトリコモナスと診断は難しいため、検査が必要となります。

「男性では尿、女性では膣ぬぐい液(膣分泌液)」の検体を用いて検査を行います。直接顕微鏡で観察する直接顕鏡検査(膣ぬぐい液のみ)、核酸増幅検査、特殊な培地でトリコモナスを培養する分離培養検査を行います。男性の場合は性質上、PCR検査でも検出されないことがあります。パートナーが陽性と診断された場合は、検査を行っても陰性と出てしまう可能性もあり、パートナー間で再感染を繰り返すピンポン感染を防ぐため、治療を優先した方が良い場合があります。

自然治癒することはないため、治療は抗原虫薬となります。

 メトロニダゾールの内服を10日間行います。以前はチニダゾールという抗原虫薬もありましたが、現在は生産終了してしまったため、メトロニダゾールでの治療のみとなります。膣だけでなく尿路などの感染の可能性も考えて第一選択は内服薬となりますが、妊娠3か月以内または妊娠の可能性がある場合は膣錠を使用します。膣錠は外陰のかゆみや膣炎に効果があるが、尿道や子宮まで感染が進んでしまっている場合は効果が期待できません。治りにくい場合や再発する場合は併用療法が必要となります。

メトロニダゾールの内服中の飲酒および服用後3日間はアルコールを飲むとアルコールが分解されにくくなるため、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇しやすくなり大変危険なため禁酒が必要です。

治癒確認は自覚症状がなくなり、トリコモナス原虫の消失を確認する必要があります。月経時にトリコモナスが増えるため、月経後に確認する必要があります。