マイコプラズマ、ウレアプラズマ

概要

マイコプラズマ、ウレアプラズマともに非クラミジア性淋菌性尿道炎の原因の1種といわれています。原因菌はマイコプラズマ・ジュニタリウム、マイコプラズマ・ホミニス、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、ウレアプラズマ・パルバムの4種が性器や咽頭などに感染し症状を起こします。クラミジアや淋菌とは症状だけでの鑑別が難しい場合が多いため、マイコプラズマ、ウレアプラズマは検査しないとわからず、クラミジアや淋菌の検査および治療後に症状が続く場合の検査やスクリーニング検査などで感染が分かることがあります。

マイコプラズマ・ジュニタリウムの検査はここ最近保険適応となったため、馴染みがあまりません。保険での検査は淋菌、クラミジアとの同時検査はできないため、淋菌・クラミジアの検査をして陰性時もしくは陽性の結果治療をしても改善しない場合に保険適応での検査が可能となっています。2022年6月より保険適応となったのはマイコプラズマジュニタリウム・トリコモナスバジナリスの核酸検出検査のため、マイコプラズマ・ホミニス、ウレアプラズマの核酸検出検査は保険適応外となっています。

性感染症による尿道炎としては淋菌やクラミジアに次ぐ原因菌といわれており、尿道炎の20%を占めるといわれています。

潜伏期間

感染から症状が出るまで1~3週間。

検査可能時期

感染機会の翌日から

感染部位

尿道、肛門、咽頭、膣

上行感染により男性では精巣上体炎、女性では子宮頚管炎、骨盤内付属器炎(卵管炎、卵巣炎)、腹膜炎などを起こします。

感染経路

通常、性的な接触により感染をします。クラミジアが含まれた体液(精液、膣分泌液、唾液、肛門分泌物など)を介して感染をするため、通常の膣性交だけでなく、オーラル(フェラチオやクンニリングスなどの口腔性交)やアナル(肛門性交)での感染も起こします。

性的な接触だけでなく、咽頭感染者とのディープキスでも感染するため心当たりなく感染していることもあります。

症状と感染部位

女性:排尿時の痛み、外陰部のかゆみ、おりものの量の増加、性交時痛など

尿道炎、膣や子宮頚管炎のため上記の症状が生じますが、ほとんどの場合無症状で、男性と比べて症状が軽い場合が多いです。治癒をせずに進行してしまう、もしくは治癒を行うも体内から完全に排除されずに残存して進行してしまう(治癒失敗)と、子宮内膜炎による不正出血や骨盤内付属器炎(卵巣炎や卵管炎)、骨盤腹膜炎をおこし発熱や腹痛の原因となることがあります。卵管炎が進行し両側の卵管が癒着のため閉塞すると不妊症の原因となることもあります。また、卵管の炎症は卵子を運ぶ機能が低下し、卵管妊娠(子宮外妊娠)を起こす可能性もあります。マイコプラズマ・ジェニタリウムでは約5%で骨盤内炎症性疾患(子宮頸部、子宮、卵管および卵巣の炎症)を起こすといわれています。

男性:軽い排尿時の痛み、尿道の軽いかゆみや不快感、分泌物など

尿道炎のため上記の症状が生じます。クラミジア感染症と似た症状が出現します。治癒をせずに進行してしまうもしくは治癒を行うも体内から完全に排除されずに残存し進行してしまう(治癒失敗)と、陰嚢の腫れや痛み、発熱をおこす精巣上体炎の原因となる可能性があります。

男女ともに咽頭・肛門への感染も起こすが症状は痛みや違和感、かゆみで症状がほとんどみられない場合も多く、感染が拡大する原因となりえます。

症状が出ているのにクラミジアや淋菌が陰性の場合は一般細菌感染症ではなく、マイコプラズマやウレアプラズマの可能性があります。自然治癒はせず、放置をして症状が進行してしまうと不妊症などの重症化の原因となる可能性があります。症状に関わらず感染が疑われる場合は検査と治療を進める必要があります。

検査および治療

マイコプラズマ・ジュニタリウムのみが保険での検査が可能ですが多くの制約があり、その1つとしてクラミジア・淋菌同時検査と一緒に検査をすることができない点があげられます。

検査は通常検査(一般検査といわれることもある、核酸増幅法での検査)があります。使用する検体は「咽頭うがい液、膣ぬぐい液(膣分泌液)、肛門ぬぐい液(肛門分泌液)」となります。

通常検査は自費もしくは保険(症状がある場合のみ)での検査となります。核酸増幅法での検査は特殊な検査機器を使用するため外部施設へ検査を依頼し、検査結果が出るまで数日要します。肛門ぬぐい液での検査は保険適応外の検査、咽頭は保険での検査が難しい(同じ月に複数部位の検査をすることができない)です。混合感染の可能性を考慮したスクリーニング検査や症状のない部位の検査を行う場合は自費での検査となります。

治療は抗菌薬となります。マイコプラズマ、ウレアプラズマともに細胞壁をもたない細菌のためβラクタム系といわれる抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系など)での治療が無効となります。

マイコプラズマではマクロライド系、テトラサイクリン系、キノロン系が使われます。しかしながら、マクロライド系、キノロン系の耐性菌が問題となっています。これまではクラミジアの治療で使用されるアジスロマイシンがマイコプラズマ・ジュニタリウムに効果があったためクラミジアの治療とともにマイコプラズマ・ジュニタリウムへの治療も検査を行わずとも同時に行えていたため、あえて検査をする必要がありませんでしたが、マクロライド系、キノロン系への耐性が急増した結果、アジスロマイシンやシタフロキサシンでの治療失敗が起こるようになっており治療は難治性です。

マイコプラズマ・ジュニタリウムは薬剤耐性化については、東京の無症候性のMSM(男性間性交渉者)でのマイコプラズマ・ジェニタリウムのスクリーニングを行った研究で、マクロライド耐性変異をもつ割合が89.6%、キノロン耐性変異をもつ割合が68.3%と高い確率で耐性を有していることがわかってきています。また、抗菌薬内服後症状が無くなっても病原菌が体内に残っていることがあるため、抗菌薬内服後2週間後以降に治癒確認検査が必要となります。

マイコプラズマ・ジェニタリウムでの治療はアジスロマイシン、シタフロキサシン、ドキシサイクリンなどの内服治療が行われます。薬剤耐性のため治癒失敗時は自費治療になりますが、スぺクチノマイシンの7日間筋注とドキシサイクリンの併用などを行う場合もあります。

ウレアプラズマでの治療はドキシサイクリン、アジスロマイシン、シタフロキサシンの内服治療となります。

性病感染時は他の性病にも混合感染している場合や、症状の出現していない部位にも感染していることがあります。保険診療での検査の範囲や項目は限られているため、スクリーニングも含めた広範囲の検査は自費となるが行った方が感染状況や治癒確認にとって重要となります。治癒に時間のかかるもしくは難しい部位での感染がある場合は少量の病原体の残存による再発やパートナーに移し、移されたりしてしまうことにより再感染してしまうことがあります。