HPVワクチン
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、子宮頸がんや尖圭コンジローマ、尋常性疣贅(ウイルス性のいぼ)などの様々な原因となるウイルスで、HPVワクチンは、主に性感染によって広がる「子宮頸がん、尖圭コンジローマの原因となりうる」HPVの感染を防ぐためのワクチンになります。
HPVのうち、がん、特に子宮頸がん、肛門がん、外陰がん、中咽頭がんの発症に関与するHPV型を「高リスク型」。
感染しても、がんには進行しにくいとされるHPV型でいわゆるイボの原因となる、「低リスク型」に分けられます。
高リスク型での発がんは女性の子宮頸がんのみのイメージが強いですが、子宮頚がん以外のがんにも関与しており、男性女性問わず感染によりリスクがあります。主な型はHPV16、18、31、33、45、52、58 などがあります。
低リスク型は尖圭コンジローマといった良性のいぼの原因となります。尖圭コンジローマは男性女性問わず感染により発症するリスクがあります。主な型はHPV6、11 などがあります。
定期接種の対象(2025年時点)となっており、公費(無料)で接種可能ですが、対象者は小学6年生~高校1年生相当の女子のみとなり、その年齢以外の女性および男性は自費での接種となります。また、定期接種は医師会から委託を受けた医療機関が実施するため、定期接種として接種可能な医療機関は限られ、事前に確認が必要となります。
予防可能な病気
予防接種をするワクチンの種類によって予防可能な病気に違いがあります。

2価ワクチン(サーバリックス)
HPV16、18へのワクチンで、「子宮頸がん」の予防を対象としたワクチンとなります。尖圭コンジローマへの予防効果はないため、尖圭コンジローマ予防効果も期待する際は、4価ワクチンもしくは9価ワクチンの接種がおすすめです。
4価ワクチン(ガーダシル)
HPV6、11、16、18 へのワクチンで、「子宮頸がん」+「尖圭コンジローマ」予防を目的としたワクチンとなります、HPV6、11で尖圭コンジローマの原因の90%を占めているといわれています。
9価ワクチン(シルガード9)
HPV6、11、16、18、31、33、45、52、58 へのワクチンでより多くのHPV型をカバーしています。
このうち、低リスク型は6、11。高リスク型は16、18、31、33、45、52、58となり、2および4価ワクチンよりもより多くの子宮頸がんのリスクとなりうるHPVの種類をカバーしたワクチンとなります。
接種スケジュール
接種するワクチン、年齢によって異なります
2価ワクチン(サーバリックス)
3回の接種が必要です。初回接種から1ヵ月後に2回目、初回接種から6か月後に3回目の接種を行います。
2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の1か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上、3回目は1回目から5か月以上、2回目から2か月半以上あけます。
4価ワクチン(ガーダシル)
3回の接種が必要です。初回接種から2ヵ月後に2回目、初回接種から6か月後に3回目の接種を行います。
2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上あけます。
9価ワクチン(シルガード9)
初回接種年齢が15歳未満の際は、2回の接種が必要です、初回接種から6か月後に2回目の接種を行います。
1回目と2回目の接種は、少なくとも5か月以上あけます。5か月未満である場合、3回目の接種が必要になります。
初回接種年齢が15歳以上の際は、3回の接種が必要です。初回接種から2ヵ月後に2回目、初回接種から6か月後に3回目の接種を行います。
2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上あけます。
副反応
起こりやすい副作用
注射した部分の痛み、腫れ、赤み
疲れた感じ、頭痛、腹痛、筋肉や関節の痛み
起こりうる副作用
注射した部分のかゆみ、出血、不快感
発熱、めまい
発しん、じんましん
緊張や不安、痛みなどをきっかけに気を失う
極めて稀におこる重い副作用
呼吸困難、じんましんなどを症状とする重いアレルギー(アナフィラキシー)
手足の力が入りにくいなどの症状(ギラン・バレー症候群)
頭痛、嘔吐、意識の低下などの症状(急性散在性脳脊髄炎(ADEM))
接種のポイント
初体験前(いわゆる処女、童貞)の接種が最も有効(ウイルス未感染の時期)。性行為によってすでにHPVに感染したことがある人でも、他の型の感染予防効果は期待できるため、できるだけ早期に接種を行うことが高い効果を期待できます。
どのワクチンを打つかはしっかりと検討が必要です。まだ接種途中であれば、より多くの型に対応するガーダシル(4価)やシルガード9(9価)への残りのワクチン接種予定分を切り替えることができます。
すでに3回接種済みでガーダシル(4価)やシルガード9(9価)を追加接種することは推奨されていません。異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性についてのデータが限られていることからです。
参照
厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~ https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html