メニュー

ボツリヌストキシン製剤について

2026年3月29日改定

ボツリヌストキシン注射とは?

ボツリヌストキシンはボツリヌス菌が産生するタンパク質で「神経毒素」の1種類です。ボツリヌストキシンは神経筋接合部においてアセチルコリンの放出を阻害することによって神経から筋肉への伝達が伝わらなくなり筋肉を麻痺させる働きがあります。神経汗腺の接合部もアセチルコリンが伝達物質として作用しているため、ボツリヌストキシンによって発汗を抑制する働きを有しています。この効果は「永続的」に続くものではなく、時間経過とともに回復します。

ボツリヌストキシンはA、B、C、D、E、F、Gの7種類に分類され、A型とB型のボツリヌストキシンが医療分野で応用されており、A型が効果時間が長く強いため美容医療分野で利用されています。B型ボツリヌストキシンである「商品名:ナーブロック(米国ではマイオブロック)」は痙性斜頸で胸鎖乳突筋や斜角筋などへの注入に使用される製剤となります。力価といわれる単位数はA型ボツリヌストキシンとは全く異なります。大まかな換算も可能ではあるのですが製剤の添付文章上「換算もできない」と記されており、美容医療での使用は基本的に用いられません。

最近では、2025 年 11 月 にアラガン・エステティックスが日本においてE型ボツリヌストキシン(トレニボツリヌストキシン E)の眉間の表情皺に関する製造販売承認を申請し、承認されれば美容医療分野での使用が期待されています。

当院で使用をするボツリヌストキシン製剤

当院では3種類のボツリヌストキシン製剤をご用意しております。

  • アッヴィ合同会社アラガン・エステティックスの「ボトックスビスタ」。
  • 韓国ヒューオン社の「リズトックス」。
  • 韓国メディトックス社の「コアトックス」。

ボトックスは一般的に広まっている呼ばれ方ではありますが、正式にはボトックスはアッヴィ合同会社アラガン・エステティックスのボツリヌストキシン製剤の商品名になります。日本では「眉間・目尻」のシワ治療に承認を取得し、2025年に咬筋膨隆(いわゆるエラ)への適応を追加しています。

コアトックスは「複合タンパク質」「ヒト血清アルブミン」を含まない製剤で耐性化しにくいと考えられているため、耐性化リスクのある場合に適した製剤となります。

リズトックス、コアトックスともにボトックスのバイオシミラーといわれるいわゆる後発品になるため、安価にボツリヌストキシン注射を受けたい場合におすすめの製剤となります。

力価の表現方法と一般名について

ヒアルロン酸などでは「ml」でどれくらいの注入を行うかを表現しますが、ボツリヌストキシンの場合は「㎎」や「ml」ではなく生物学的活性を元にした力価という「Unit(単位)」が使用されます。

〇〇Unit打てば必ず効果が出るといったものではなく、感受性の個人差は大きいといわれており、自分自身にあった部位毎の単位数が大変重要となります。効果が注入した単位数の予想より弱い場合には、薬剤の耐性による影響も考えられますが、感受性により元々効きにくく注入量が不十分である可能性も考えられます。追加投与や次回の注入時に多めに注入するといった調整が必要となります。

ボツリヌストキシン製剤間で生物学的活性を測定する条件や方法の違いから各製品での効果や互換性の違いがあるため、以下の一般名がついています。日本国内で流通しているボツリヌストキシンの大部分は「ボトックス」もしくは同製剤のバイオシミラー製品となります。

ボツリヌストキシンの一般名について、代表的なものは以下のものがあります

一般名  
オナボツリヌムトキシンA 米国アッヴィ合同会社アラガン・エステティックスの「ボトックス」
インコボツリヌムトキシンA ドイツMERZ社の「ボコーチュア(ゼオミン)」
アボボツリヌムトキシンA 英国IPSEN社が開発しガルデルマ社が販売する「ディスポート」
プラボツリヌムトキシンA 韓国デウン社の「ナボタ」
レティボツリヌムトキシンA 韓国Hugel社の「ボツラックス(リジェノックス)」
ニボボツリヌムトキシンA 韓国メディトックス社の「イノトックス」
リマボツリヌムトキシンB 米国スパーナス社の「ナーブロック(マイオブロック)」

※コアトックス、メディトックスは一般名が割り当てされていません。

単位換算は概ね以下のようになります。

ボトックス 1Unit (U) を基準とした場合、ゼオミンやコアトックスといった150kDaは1:1、ナボタ、ボツラックス(リジェノックス)といった韓国製の900kDa製剤は1:1となります。

ディスポートは、2.5 〜 3 Speywood Unit (sU) と「独自の単位」となり、ボトックス10単位=ディスポート25〜30単位に相当します。
ナーブロック (B型)は、 40 〜 50 Unit (U)と A型とは力価が大きく異なります。

各ボツリヌストキシン製剤の比較

ボツリヌストキシンはボツリヌス菌が産生するたんぱく質のことをいいます。ウィスコンシン大学で研究・開発がすすめられた、Type A Hall Hyper株といわれるボツリヌス菌が、世界のボツリヌス治療における「絶対的な基準(ゴールドスタンダード)」とも言える非常に重要な存在です。

Type A Hall Hyper株から開発された製剤は、Oculinum(オキュリナム)という名前で1989年に米国FDA(食品医薬品局)の正式な承認を受け、その後、製薬会社のアラガン(Allergan)社がこの権利を買い取り、名前を「BOTOX(ボトックス)」に変更して世界中に広めました。

同じ菌株を使用したボツリヌストキシンは韓国メディトックス社の「ニューロノックス、メディトックス、コアトックス、イノトックス」となります。Type A Hall Hyper株を米ウィスコンシン大学で研究していたヤン・ギュファン博士が韓国に持ち込み、研究員をしていたチョン・ヒョンホ博士が研究を引き継ぎ、製剤化させメディトックスを創業しました。そのため、ボトックスと全く同じルーツを持ち、「ボトックス」との同等性を示す根拠ともいえます。

ATCC 3502株はHall株の毒素産生量が多いHyper株に分岐する前の状態の菌種となり、有効成分はType A Hall Hyper株とほぼ同等のものとなります。同じ菌株を使用したボツリヌストキシンはドイツMERZ社の「ゼオミン(ボコーチュア)」と韓国ヒューオンス社の「リズトックス(ヒュートックス)」になります。ゼオミンは ATCC 3502株から毒素を抽出し、複合タンパク質を取り除いて150 kDaにしたもので、リズトックスはATCC 3502株から毒素を抽出し、複合タンパク質を残したまま高純度に精製して900 kDaにしたものとなります。

KJ997761株は韓国Daewoong社の「ナボタ」になりますが、KJ997761株をめぐりメディトックス社との裁判が続いています。

CBFC26株は韓国ヒューゲル社の「ボツラックス(リジェノックス)」はCBFC26株が使用され、有効成分である神経毒素のアミノ酸配列や毒性は、ボトックス(Hall株)と非常に高い相同性(類似性)を持ち、ボトックスと同等の安定した臨床データを有しています。

ボツリヌストキシンにおける「複合たんぱく質」と「安定剤」

有効成分である「純粋な神経毒素(150 kDa)」は単体だと非常にデリケートで、胃酸や消化酵素によってすぐに分解されてしまいます。ボツリヌス菌は、神経毒素を胃腸の過酷な環境から守り、無事に腸の粘膜から吸収させるための「頑丈なカプセル」として、無毒の複合タンパク質を同時に産生し、結合させた状態で産生します。この神経毒素と複合タンパク質が合体した巨大な塊(900 kDa)のことを、「前駆毒素」と呼びます。

複合タンパク質(耐性化の原因となる)

製薬会社は、ボツリヌス菌から「前駆毒素(900 kDa)」を集め、製剤のタイプにより処理の仕方が変わります。

900 kDa:ボトックス、リズトックス、ナボタなど

菌が作り出した「神経毒素+複合タンパク質」を、そのままの自然な形で精製して薬にします。(※体内に入って中性に保たれた組織液に触れると、複合たんぱく質は自然に外れて有効成分だけが働き始めます)

150 kDa:コアトックス、ゼオミンなど
菌が作り出した「神経毒素+複合タンパク質」から、特殊な技術を使によって「複合タンパク質をわざわざ剥がして捨てる」という工程を踏み、中身の150 kDaだけを抽出して薬にしています。

複合たんぱく質を除去すると、150 kDaの純毒素がガラス面に吸着して成分が失われてしまったり、少しの温度変化や酸化で変性してすぐに薬効を失ってしまいます。それを防ぐため、安定化剤・賦形剤を加えることで、製剤としての安定性・長期保存性を確保しています。

ヒト血清アルブミン(コアトックス以外での添加剤)

ボツリヌストキシンはガラスやプラスチック素材に吸い付く「非特異的吸着」という性質があります。有効成分は微量なため、ガラスやプラスチックに吸着してしまうと、実際の注入する単位数が大きく目減りしてしまうため、ヒト血清アルブミンを添加することでガラス面やプラスチック面をコーティングし、重要な毒素が吸着して失われるのを防ぐバリアとして機能します。

バイアル内の「カサ増し」をし目視確認できるようにする目的もあります。ヒト血清アルブミンが添加されていない状態だと、肉眼的に目視ができずに空っぽに見えてしまうため、ヒト血清アルブミンを添加することで目視が可能となり、確実に希釈できているか確認をすることができるようになります。

毒素の分子同士がくっついて凝集し立体構造が崩れて薬効が失活てしまうのを防ぎ、乾燥状態でも毒素の構造をクッションのように包み込んで長期間安定させる役割を果たす働きがあります。

 

  複合タンパク質 ヒト血清アルブミン
コアトックス 不使用 不使用
イノトックス 使用 不使用
ボコーチュア(ゼオミン) 不使用 使用
ボトックス等他の製剤 使用 使用

 

ポリソルベート20、L-メチオニン(非動物性成分、コアトックス・イノトックスのみの添加剤:ヒト血清アルブミンの代用)

ポリソルベート20:は医療用の安全な非イオン性界面活性剤で、これが毒素の表面やガラス面を覆い、タンパク質の吸着や凝集を強力に防ぎます。

L-メチオニン:はアミノ酸の一種で、抗酸化作用を持ちます。デリケートな150kDaが酸化ストレスによって劣化・失活するのを防ぐバリアとして働きます。

ボツリヌストキシン注射の効果が弱い、もしくは効かない場合

ボツリヌストキシン注射の効果が弱い、もしくは効かない場合は様々な原因が考えられます。

感受性の個人差

投与した単位数に対して発現する効果の強さに個人差があるため、十分な効果を発揮しない可能性があります。逆に強く効果が出すぎてしまい、表情筋で全く筋肉が動かないもしくは萎縮をおこしてしまうこともあるため、定期的に通院しボツリヌストキシンの治療を受ける場合は「何単位」を「どこ」に打つかを把握しておくことが大事になりますが、どの層への注入かも重要となるため、施術者の「クセ」の影響を受けるため、同一の医師による施術を受けながら、最適な単位数や注入部位を決めていくことが重要となります。

はじめて注入する場合は最小量から始めて、効果が予想を大きく下回る場合(全く効果がない場合)は追加での注入や次回注入時に増量するなどをして、ボツリヌストキシンによる副作用を最小限にし最適な量を調整していくと安全に治療を進めることができます。

品質管理の問題(力価が低下した製剤を使用)

承認薬である「ボトックスビスタ」は海外工場で製造された後、製薬会社による徹底した管理下で国内製薬会社で輸入、管理され国内流通網で各クリニックで保管され治療に使用されます。

未承認薬もしくは並行輸入品薬は海外工場で製造された後、日本の輸入代行会社により発注され、工場から直接もしくは海外の卸業者を経由して国内の各クリニックに送り届けられて、保管され治療に使用されます。未承認薬の場合でも、製造会社の日本法人が輸入代行をする形で徹底した管理下で工場から直接日本国内へ輸入され、クリニックへ届けるといった徹底した管理を行う場合もあります。

承認薬のボトックスビスタの並行輸入品では未承認とほぼ同様の輸入管理となり、実際のところとしてボトックスを使用しているからといってそれが正規の承認薬として「アッヴィ」から仕入れられているかは受診者側からは知る方法はなく、クリニックの開示内容を信じるしかありません。

以上のように、流通経路もしくはクリニック内での扱いにより効果が減弱する可能性があります。

製剤作成や注入手技の影響

ボツリヌストキシンは「イノトックス」を除き、粉末の製剤となります。この粉末の製剤を生理食塩水で希釈をし使用します。単位数は同一でも希釈で使用する生理食塩水の量によって、0.1ccあたり4単位や2単位など希釈の仕方によってボツリヌストキシンの濃度が変わります。濃度が濃すぎると量の微調整が難しくなり、薄すぎると注入した周囲に拡散してしまい効果を発揮してほしくない部位で効いてしまう可能性が出てきてしまいます。

表情筋注入時には筋肉の起始停止が異なるため、注入する最適な深さも異なります。また、ふくらはぎなどの骨格筋への注入時に浅すぎると皮下脂肪内への注入となり筋肉内へ注入されない可能性もあるため、注射手技によりボツリヌストキシンの効果が十分発揮されていない可能性もあります。

中和抗体産生による耐性

「高用量」、「高頻度(特に2か月以内の投与)」、「累積投与量が多い」、「複合タンパク質の含有」、「3週間以内のリタッチ」が中和抗体産生に関与しているといわれています。

使用用量については、1回あたり200単位を超えると耐性ができやすくなる可能性があります。

頻度については、どのボツリヌストキシン製剤でも3カ月以上間隔を空けての投与が推奨されており、同一部位ではなく全身全ての部位に関してになります。眉間を打った3日後に肩を打って、7日後にエラを打ってのような打ち方だとボツリヌストキシンの注入自体は高頻度での投与で抗体ができやすくなるため、ボツリヌストキシンを注射するときはまとめて注射を打つ方が抗体ができにくくなります。

複合タンパク質を含有する製剤は抗原性が高くなるため、中和抗体の産生が起こりやすいと考えられています。繰り返しボツリヌストキシンを継続して注入していく場合は、複合タンパク質を含有しない「コアトックス、ボコーチュア(ゼオミン)」が使用する製剤として適していると考えられます。

ボツリヌストキシン製剤に対する抗体は、毒素そのもの(150kDa)に対する中和抗体と複合タンパク質に対する非中和抗体があるといわれています。非中和抗体は産生されても効果に影響がないといわれています。しかしながら、一部の抗体でボツリヌストキシンの毒素そのものへの軽鎖領域に結合することが報告されているため、製剤の変更により効果発現する可能性もありえます。製剤の変更(複合タンパク質を含まない「コアトックスやボコーチュア(ゼオミン)」といったボツリヌストキシン製剤)、毒素自体をB型ボツリヌストキシンへの変更(単位数の互換が難しいため、効きすぎでの予期せぬ副作用の出現リスクもありうる)、施術間隔を長めに空けるといったことで効果を発揮する可能性があります。

また、破傷風毒素とボツリヌストキシンは50 %を超えるアミノ酸配列の類似性があるといわれ、破傷風毒素抗体が生体内でボツリヌストキシンに結合するといわれています。破傷風トキソイドの注射により破傷風に対する免疫応答がある場合ではボツリヌストキシンへも反応する可能性が考えられます。

体内動態について

ボトックスの添付文章を参考します。ラットの筋肉中にボトックスを注入した際、注入から24時間後に投与量の5%に減少し、消失半減期は約10時間と推定されています。血漿中濃度は、2時間後に最高値となり、投与量の3%が認められ、24時間後には1%にとなったとされています。

注入し24時間経過していれば注入部位にボトックスはほぼ残存していない状態となるため、24時間経過していればボツリヌストキシンに影響を及ぼす熱(サウナや長風呂)は大きな影響はないと考えられます。

一般的にボツリヌストキシンは80度で30分もしくは85度で5分の加熱で破壊されます。サウナは80~100度近くまで温度が上昇するため、注入当日のサウナは効果が減弱する可能性があるため避ける必要があります。また、血流を促すことをすると、ボトックスが注入部から周囲に拡散をし予期せぬ効果が出現する場合があるため、控える必要があります。

注意点、副作用

1回の投与量が500単位を超えなければ中毒症状は生じないといわれていますが、体格や感受性の違いがあるため、高用量のボツリヌストキシン注射時は注意が必要となります。耐性化のリスクも考慮にいれて単位数については決める必要があります。

施術後の注意点についてはクリニックにより変わるため、参考としてお願いします。

患部のマッサージ

注入部位の腫れや内出血がある場合は、薬剤が周囲に拡散して他の筋肉への影響が出現したり、効果が弱まる可能性があります。

注射後の飲酒

注入当日は腫れや内出血が悪化や薬剤が拡散する可能性があるため、当日の飲酒は避けた方がより安全です。

注射後のサウナや入浴

ボツリヌストキシンは注入から24時間経過後には筋肉内に5%しか残存しなくなるため、24時間経過後であればほぼ影響はほぼないと考えらます。血行が促進されるため、注入当日は腫れや内出血が悪化する可能性があり、当日のサウナや入浴は避けた方がより安全です。シャワーについては問題ありません。

運動

注入当日は腫れや内出血が悪化する可能性があるため、当日の運動は避けた方がより安全です。

妊娠

海外で妊娠初期に500単位の投与で胎児の死亡が報告されています。また、動物実験で妊娠および胎児への影響が認められているため、男性では3か月間の避妊。女性では施術後2回の月経を経るまでの避妊を行うようにとされています。授乳中の投与はできません。

参照

当院で使用するボツリヌストキシン、ボトックスについて

当院で使用するボトックスは正式には「ボトックスビスタ」といいます。アッヴィ社が製造・販売を行っている、厚生労働省の製造販売承認を受けた製剤を使用しております。

未承認医薬品等

リズトックス、コアトックスは医薬品医療機器等法上、未承認医療機器です。

入手経路等

当院医師の判断の元、国内販売代理店経由で個人輸入しています。

国内の承認医薬品等の有無

日本国内では、「ボトックスビスタ」が65歳未満の成人における眉間、目尻の表情皺に対して厚生労働省に承認されたボツリヌストキシン製剤として存在します。当院では、患者様のニーズに応じて、リズトックスを使用させていただきます。

諸外国における安全性等に関する情報

リズトックスは、韓国MFDS、中国NMPAから承認を受けております。
コアトックスは、韓国MFDSから承認を受けております。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME