八王子駅南口徒歩二分の皮膚科、泌尿器科、内科クリニック

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PrEP(HIV曝露前予防内服)

PrEP(HIV曝露前予防内服)

PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis) は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染を予防するために、HIVに感染していない人があらかじめ抗HIV薬を内服する予防方法です。日本語では「HIV暴露前予防内服」と訳されます。

予防内服なしに暴露した可能性がある場合ではPEP(HIV暴露後予防内服)が適応となります。

PrEPで使用される薬

現在、PrEPに使用される代表的な薬剤は以下の薬剤になります。

PrEPで使用される薬剤

ツルバダ(Truvada®):テノホビル(TDF)+エムトリシタビン(FTC)

デシコビ(Descovy®):テノホビルアラフェナミド(TAF)+エムトリシタビン(FTC)

※2024年にツルバダがPrEPとして薬事承認をされたため、ツルバダの海外製ジェネリック薬「TENVIR-EM」はかつてはPrEP目的で適応外使用をされていましたが、現在は国内で入手できなくなりました。
デシコビはPrEPとして薬事承認をされていないため、海外製ジェネリック薬「Tafero-EM」が適応外使用されることがあります。

ツルバダとデシコビの違い

日本では、ツルバダ(TDF/FTC)がPrEPとして承認され、デシコビは承認を得ていません。CDCのPrEPの臨床ガイダンスにおいて、デシコビは膣性交を行う女性、トランスジェンダー男性(挿入される側として膣性交を行う可能性がある)での有効性の研究がされておらず推奨されていません。挿入される側での膣性交を行う人では「ツルバダ」の内服が推奨されています。

ツルバダは「全ての人で使用が可能」で「デイリーでもオンデマンドでも使用が可能」ですが、腎機能への影響が強いためeGFRが60以上ある必要性があります。

デシコビは「膣性交で挿入される可能性のある、シス女性(生まれたときの性別が女性、性自認も女性)、トランス男性(生まれたときの性別が女性、性自認が男性)では推奨されません」また、「デイリーでの使用のみ」で、腎機能への影響がツルバダと比べ弱いため、eGFRが30以上あれば内服できます。

トランス女性(生まれたときの性別が男性、性自認は女性)でホルモン療法を受けている方ではオンデマンドPrEPを使用することはできません。

期待される効果

デイリーPrEPでは性行為によるHIV感染予防効果は最大で約99%という報告もあり、非常に高いです。正しく服用すれば高い予防効果が得られます。PrEPの内服の仕方には「デイリーPrEP」と「オンデマンドPrEP」があります。

デイリーPrEP

デイリーPrEPは毎日1錠を継続的に内服をすることで効果を発揮します。デイリーPrEPは内服開始から、肛門性交には7日間、膣性交には21日間の内服で最大の薬物濃度に達し効果が期待できるようになります。

「1錠だけ飲んで予防できる」という誤解は危険で、PrEPは継続内服によって体内に有効な薬物濃度を保つことで予防効果を発揮します。肛門性交では7日、膣性交では21日(膣組織・子宮頸部への薬剤移行に時間がかかるため)前からの内服が必要となります。

オンデマンドPrEP

オンデマンドPrEPは性行為のタイミングに合わせて内服をする方法で、性行為の 24時間~ 2時間前に2錠、最初の内服から24 時間後に1錠、さらに24 時間後に1錠の内服をする(2-1-1法)方法があります。

一見するとオンデマンドPrEPの方が性行為のタイミングに合わせて内服ができるため、よさそうに見えますが有効性は肛門性交のみのため、膣性交では推奨されていません。MSM(男性間性交渉者)のみで推奨されています。

内服開始前と内服開始後に定期的な血液検査が必要となります。

内服前の血液検査

HIVの検査、B型肝炎の検査、腎機能の検査を行う必要があります。また、PrEP内服中の方がHIVに感染した場合は多剤併用療法での治療を開始する必要があるため、定期的な血液検査(3カ月ごと)が必要です。

HIV検査 → 陰性の確認

第4世代のHIV抗原・抗体検査を行い陰性の確認を行います。陽性時はHIVかどうかの確定診断を行うための検査を行いHIV感染陽性時はHIVの治療を開始します。ウィンドウ期での検査では感染をしていても陰性と出ることがあり、PrEP開始後しばらく経過してから陽性と診断される場合もあります。

B型肝炎の検査 → 陽性時はデイリーPrEP

HBs抗原検査を行い陰性の確認を行います。慢性のB型肝炎の際はオンデマンドPrEPの内服を行うことはできず、デイリーPrEPという方法での内服になります。
ツルバダには「テノホビル」、デシコビには「テノホビルアラフェナミド」というB型肝炎治療薬が含まれています。慢性B型肝炎と診断され、PrEPの内服をしている場合では中断によりB型肝炎が悪化する可能性があります。

腎機能検査

ツルバダはeGFRが60以上
デシコビはeGFRが30以上

デイリーPrEP内服開始後の診察や検査

PrEP内服を開始して1か月後には副作用のチェックのための診察と、「HIV検査」を行います。

その後は3か月ごとに「HIV検査」を行います。必要に応じて他の性感染症のスクリーニング検査も行います。「B型肝炎の検査」「腎機能検査」は6カ月ごとに行っていきます。

主な副作用

吐き気、頭痛
腎機能障害(まれ)
骨密度の軽度低下(長期使用時)

内服のやめ方

デイリーPrEPは、性行為から7日間内服をすることで安全に中止することができます。

ツルバダでデイリーPrEP中のうち、MSM(男性と性行為をする男性)、男性、ホルモン治療を受けていないトランス女性が、最後の性行為から24時間後と48時間後に1錠ずつ内服することで安全に中止できます。

注意点

PrEPではHIV以外の性感染症(クラミジア・淋菌・梅毒など)は予防できないため、クラミジア・淋菌・梅毒の予防にはドキシペップが有効となります。

定期的なHIV検査(3ヶ月ごと)が必須となり、HIV陽性時は多剤併用療法での治療を開始していきます。

参照

日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)第1版 ー利用者ガイドー https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2023/10/uder-guide-matome-1Pver.pdf

日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)【第1版 ver.2.0】 利用の手引 https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2024/07/tebiki-1Pver-new.pdf

CDC PrEPの臨床ガイダンス https://www.cdc.gov/hivnexus/hcp/prep/index.html

PrEPの予防効果と副作用 https://www.hiv-pt-portal.jp/truvada/prep/reaction

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